衆院解散:「22日」続く攻防…輿石氏は引き延ばし画策{毎日新聞}

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衆院解散:「22日」続く攻防…輿石氏は引き延ばし画策
毎日新聞 2012年11月09日 02時32分
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▼「毎日新聞」から全文引用



 野田佳彦首相が衆院解散の前提の一つに挙げる特例公債法案が今国会で成立する見通しになった。遅くとも12月16日の衆院選実施を目指す自民党が、今月22日までに野田政権を解散に追い込もうと審議促進にかじを切ったためだ。しかし、早期解散に慎重な民主党輿石東幹事長は、かたくなに拒んできた衆院予算委員会を開催することでなお引き延ばしを画策する。成立時期は「22日」の前か後か。与野党の神経戦が続く。

 自民党は、赤字国債発行に必要な特例公債法案を「人質」に首相に解散を迫る従来の方針から、成立を容認することで地ならしする柔軟路線へと転換。衆院での同法案の審議入りと交換条件にしていた衆院予算委員会の日程が固まる前に8日の本会議に出席した。民主党が提案した14日の党首討論も受け入れた。

 これまで強硬姿勢が目立っていた脇雅史参院国対委員長が8日、民主党の池口修次参院国対委員長に「19日成立」を電話で持ちかけたのもその一環。自民党は衆参両院の足並みがそろい始めている。これに対し、年内選挙を回避したい輿石氏は成立を22日以降に遅らせる駆け引きに出た。

 民主党は8日午後、12日の予算委開催を求める自公両党国対委員長に対し、13日も応じると回答。野党への「サービス」を装いつつ、同法案の衆院通過を13日から15日に遅らせた。公明党の漆原良夫国対委員長は「100円(1日)くれと言ったら、200円(2日)くれた。なぜ余分なんだと聞いてもしょうがない」と皮肉った。

 同法案が15日に衆院を通過すると、与野党の攻防の舞台は参院に移る。自民党は21日までの可決・成立を狙うが、衆院で予算委を2日間開けば参院側でも同じ日数を確保するのが通例で、審議日程は窮屈になる。民主党はさらに、参院での首相の所信表明演説を予算委開催の条件にしており、自民党の思惑通り早期成立する見通しは立っていない。

 自民党安倍晋三総裁は8日、国会内で記者団に「われわれは大きく譲歩した。首相も(『近いうち解散』の)約束を果たしてほしい」と重ねて強調した。しかし、特例公債法案が成立しても、選挙制度改革など解散へのハードルはなお残る。伊吹文明元幹事長は同日、伊吹派の会合で「わが執行部は総裁以下新しく、(民主党政権への)免疫がない」と懸念を表明。公明党内にも「解散に追い込むには迫力不足」(幹部)と不安の声がある。【横田愛、影山哲也】


 特例公債法案が成立しなければ、12月初めにも国の財源が枯渇しかねないだけに、法案成立の見通しに「先行きが見えてきた」(財務省幹部)と安堵(あんど)の声も聞かれた。しかし、政治の混乱で国が借金さえできず、予算の執行抑制を続けざるを得ないという異常事態は成立まで続く。政府は法案成立をにらみ、追加の経済対策の取りまとめを急ぐが、「重要な事業を盛り込んだら、政権交代があった時、撤回されかねない」(経済官庁幹部)と、各省庁では衆院解散・総選挙を警戒する動きも強まっている。

 政府は法案が成立すれば、地方交付税の配布延期など、予算執行抑制をすみやかに解除する。8日の衆院本会議で、城島光力(こうりき)財務相は「(執行抑制は)国民生活に重大な影響を与える」と述べ、法案成立の必要性を改めて訴えた。前原誠司経済財政担当相も「国債発行が休止したら日本の資金調達への信頼が失われる」と、法案が成立しないリスクを強調した。

 法案成立を前提に、政府は10月末に策定した国費4000億円規模の経済対策第1弾に続く、より大規模な対策第2弾を月内にまとめる方針。第1弾だけでは「国内総生産の押し上げ効果は0.1%」(内閣府)と、景気下支えには力不足だからだ。財源としては、11年度の予算の使い残し(決算剰余金)約1.2兆円などが見込まれ、補正予算案を編成する可能性もある。

 ただ、特例公債法案の成立が財源枯渇ギリギリのタイミングになる中、補正予算案などを今国会中に提出するのは時間的に厳しそうだ。仮に年内に衆院解散・総選挙が行われ、政権交代になれば、現政権の経済対策は見直しを迫られる恐れもあり、各省庁では様子見ムードも広がっている。【工藤昭久】