政権安定に必要な「改革派」と「体制維持派」の使い分け 連載:「日本」の解き方{zakzak}

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政権安定に必要な「改革派」と「体制維持派」の使い分け
連載:「日本」の解き方
2012.12.20
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20121220/dms1212200709002-n1.htm
▼全文引用

 衆院選自民党が圧勝した。公明党と合計で325議席衆院の3分の2を超えた。この数字は法案の衆院再議決を可能にするので、衆参ねじれは法案に関しては問題にならなくなった。もっとも安倍政権衆院再議決は可能な限り避ける方針だという。

 自民党は3年あまりで政権復帰が決まったが、前回政権を失った轍を踏まないためには何をすべきか。

 世間一般では小泉構造改革への批判が出てきて、自民党は政権を失ったともいわれている。しかし、政治学での分析では逆で、小泉政権を否定して改革への流れが変わってから、自民党の支持率が落ちてきている。

 筆者の小泉・安倍政権での経験でも、前回の安倍政権時代の2006年12月に、郵政民営化に反対した議員を復党させてから風向きが変わった印象だ。

 こうした動きがあると、悪循環に陥り次々と悪いことが起こるものだ。閣僚の事務所費問題、政府税調会長の個人的スキャンダルなどが発覚し、政権のパワーが落ちていった。年金問題への対応でも、危機感のない人もいて、適切にできなかった。

 一つ一つの事件を見ていると、改革マインドとは無関係のようだが、そうではない。政権には、従来の体制を使って堅実に当面の課題をこなす体制維持システムと従来体制を打ち破る改革派の二つの顔があり、改革マインドがなくなると、既得権擁護ばかりとなって政権の歪みが表面化してくるのだ。小泉政権では、竹中平蔵経済財政相という改革系ラインと体制維持の霞が関ラインを案件ごとにうまく使い分けていた。

 いずれにしても、政権の安定のためには来年7月の参院選が重要だ。6年前の参院選では、当時の安倍晋三首相は37議席しか取れずにその後退陣に追い込まれることになった。その時のリベンジでもあり、さらに安倍氏が長期政権を維持するためにも最重要の課題であることは間違いない。

 そのためには、できるだけ国会以外のところで経済政策をうまくやっていく戦略を取るだろう。新政権の官邸人事や閣僚人事も大事だが、小泉政権のような経済財政諮問会議と同様な会議を復活させ、マクロ経済の司令塔にするのだろう。この運営で、改革マインドを明らかにしてどれだけ実効策を打ち出せるか。

 補正予算の編成もあり、官僚制の頂点にいる財務省との距離感も試金石になる。体制維持システムをどのように使いこなせるかがポイントだ。

 日経平均株価野田佳彦首相が解散を決めた11月14日の8664円から選挙前の12月14日に9737円と自民党政権誕生の予想で12%あまり上昇した。17日には自民大勝を受けて9900円台も一時回復した。政権運営の成果は経済パフォーマンスに表れる。

 衆院選では何より景気対策に国民の関心が集まった。期待感があるだけにそれが裏切られると逆バネになって来年の参院選ではノーと言われるだろう。それだけに自民党にはしっかりと責任を果たしてもらいたい。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一
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