伊方原発運転差し止め訴訟:「原発のない社会」訴える 県内被災者ら、事故の悲惨さ説明−−第2回口頭弁論 /愛媛

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伊方原発運転差し止め訴訟:「原発のない社会」訴える 県内被災者ら、事故の悲惨さ説明−−第2回口頭弁論 /愛媛
毎日新聞 2012年09月26日 地方版
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 ◇「フクシマを愛媛に置き換えて」

 松山地裁で25日開かれた四国電力伊方原発伊方町)の運転差し止め訴訟の第2回口頭弁論では、福島第1原発事故で古里を追われた被災者の原告が意見陳述を行い、原発事故の悲惨さを説明した。原爆被爆者や農業政策の専門家の原告も法廷に立ち、「原発のない社会」への強い思いを訴えた。次回は来年1月29日の予定。

 伊予市の農業、渡部寛志さん(33)は同事故のため福島県南相馬市から避難中で、原告の共同代表も務める。法廷では「避難先での肉体的・精神的疲労が原因で多くのじいちゃん、ばあちゃんが亡くなった。自ら命を絶った人もいる」と、原発事故が生んだ「死」を指摘。「生きる場を強制的に奪われ、慣れない土地で毎日を送る人がいる」と、被災者の苦悩を語った。「福島を、自らの住む地域に置き換えて想像する努力をしてもらいたい」とも呼びかけた。

 松山市の原告、松浦秀人さん(66)は原爆爆心地約2・5キロの広島市内にいた母親の胎内で被爆した。陳述では「結婚や我が子の誕生は喜んで待ち受けるが、私たち被爆者は不安におののきながら迎えている」と声を詰まらせ、「原爆と原発は双子の兄弟」と非難した。




 原告共同代表で、愛媛大教授(農業政策)の村田武さん(70)は農漁業の被害の観点から意見陳述し「東北・北関東諸県では(出荷の)制限品目と自粛品目のオンパレード。福島県ではすべての沿岸漁業の自粛が今も続く」と説明。年間漁獲高約130億円の福島県に対し、愛媛県の漁獲高は1025億円に上ると指摘し「愛媛の漁業が伊方原発事故で壊滅させられる事態は想定外とはいかない」と廃炉を求めた。

 四電側は「伊方原発で(福島と)同様の事故が発生するのは誤り」と書面で反論したが、原子炉の設置許可申請書など基本的な資料の提出要求には「資料が膨大」と応じなかった。閉廷後、松山市の県美術館講堂で開かれた原告集会で、薦田伸夫弁護団長は「厚顔無恥で怒りを感じる。真摯(しんし)な説明といえるのか」と対応を批判した。

 一方、四電は閉廷後、「科学的な見地に立って伊方原発の安全性について主張と立証を尽くしていきたい」とのコメントを出した。【中村敦茂、栗田亨】