“2030年代原発ゼロ”新政策決定<NHK NEWS WEB>

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“2030年代原発ゼロ”新政策決定
9月14日 18時5分
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◇全文引用



政府は原発事故を受けた新しいエネルギー政策について、関係閣僚による会議を開き、2030年代に原発の稼働ゼロを可能とするよう取り組むとともに、使用済み核燃料の再処理事業は続けるなどとすることを正式に決めました。

政府は14日夕方、野田総理大臣をはじめ、枝野経済産業大臣や細野原発事故担当大臣、それに古川国家戦略担当大臣ら関係閣僚による会議を開き、原発事故を受けて検討してきた新しいエネルギー政策を正式に決めました。
それによりますと、「原発に依存しない社会の1日も早い実現」を掲げ、「2030年代に原発稼働ゼロを可能とするようあらゆる政策資源を投入する」と明記し、太陽光や風力など「グリーンエネルギー」の普及拡大を図るとしています。
具体的には原発の運転を開始から40年に制限し原発の新設・増設は行わない。
それまでの間、原子力規制委員会が安全性を確認した原発は重要電源として運転を再開するなどとしています。
一方で、核燃料サイクルについて、使用済み核燃料の再処理工場などがある青森県を最終処分地とせず引き続き再処理事業に取り組むとともに、国際社会に対し核不拡散と原子力の平和的利用の責務を果たしていくとしています。
さらに、高速増殖炉もんじゅ」については、これまでの成果を取りまとめるとともに、放射性廃棄物の減量化などを目指した研究を行い、その成果が確認されれば研究を終了するとしています。
そして、将来のエネルギー情勢などを見通すことは極めて困難だとして、新しいエネルギー政策の検証を行いながら不断に見直していくとしています。
これを受けて、野田総理大臣は「去年3月の事故を受けて原発に依存しないと決めたことに伴い、一段と難しい課題に直面しているが、もう解決を先送りする訳にはいかない。知恵を出し合い負担を分かち合って、国民と新しいエネルギー社会を築いていく」と述べました。
一方で、野田総理大臣は「見通せない将来をあまり確定的に決めてしまうことはむしろ無責任であり、基本はぶれず、かつ、将来を過度に縛ることなく、確かな方向性と柔軟性をあわせもった戦略が必要だ」と述べました。
政府は新しいエネルギー政策の実施に向けて「グリーンエネルギー」の普及拡大を図るための具体策などを引き続き検討することにしています。

使用済み燃料 行き場失う可能性も

日本では、原発から出る使用済み核燃料をすべて再処理し、再び燃料として利用する核燃料サイクルを進めていて、使用済み燃料は原発内のプールに移して一定期間保管したあと、青森県六ヶ所村の再処理工場などに搬出することになっています。
ところが、再処理工場の本格運転が大幅に遅れていることで、各地の原発のプールには行き場のない使用済み燃料がたまり続けています。
NHKが各電力会社に取材してまとめたところ、原発にある使用済み燃料は先月末現在、合わせておよそ1万4400トンで、全国で貯蔵可能な量の70%に上り、新潟県柏崎刈羽原発では83%、佐賀県玄海原発では82%に達しています。
これらの原発では、今後、施設の外に搬出できないまま運転すれば、あと2年程度でプールがいっぱいになる計算です。
プールがいっぱいになれば燃料の交換ができなくなり、結果的に原発の運転もできなくなります。
こうした状況のなかで、今後、重要になるのが、長年、国の原子力政策に協力し、再処理工場をはじめ核燃料サイクル関連施設を受け入れてきた青森県などの対応です。
青森県などは、平成10年に「再処理事業が著しく困難になった場合、使用済み燃料を施設外に搬出する」という覚え書きを事業者と交わしています。
政府は、今回、再処理事業の継続を打ち出しましたが、一方で将来的に原発がゼロになれば再処理の意義は大きく失われるため矛盾を抱えています。
新しいエネルギー政策の検討にあたって再処理工場がある六ヶ所の村議会は、今月7日、国が再処理の撤退を決めた場合、使用済み燃料の運び込みを認めないとなどする意見書を全会一致で採択し、政府の動きをけん制しました。
今後、政府が対応を誤れば使用済み燃料が行き場を失う可能性があり、原発の運転問題と関係して、政府は難しい対応を迫られます。

立地自治体への影響どう緩和するか

原発が立地する自治体には、電気料金に上乗せして徴収される税金から、毎年、合わせておよそ1000億円の交付金が支払われ、電力会社も原発1基当たり数十億円の固定資産税を納めています。
NHKの取材では、原発や関連施設のある全国44の自治体が受け取った交付金や税収などの総額は、原発の運転が始まった昭和40年代からこれまでに少なくとも3兆1120億円に上っています。
こうした自治体の財政に加えて立地地域では多くの企業が原発関連の仕事に携わっていて、宿泊施設や飲食店などのサービス業はじめ、地域経済の大半が原発に依存しています。
こうしたなかで、今回、政府が決めた方針で運転を40年に制限する原則を適用した場合、国内の50基の原発のうち17基が10年以内に廃止になる計算です。
なかでも福井県美浜町は、町内ある3基の原発すべてが4年後に廃止になる可能性があり、今の制度では交付金が入らなくなるため、地域経済の影響は大きいものがあります。
このため、福井県などが運転を止めたあとについても、廃炉が完了するまで交付金を継続すべきだと求めていますが、政府は具体的な対策を示していません。
一方、立地自治体の中には、事故のあと脱原発の方針を打ち出した福島県茨城県東海村のように原発に依存しない地域づくりを検討し始めたところもありますが、多くの自治体は、政府の対応を見守っている状況です。
現実に立地地域の構造転換を図るには新たな産業の誘致など、長い時間と多くの費用が必要で、一朝一夕では進みません。
原発ゼロの実現には、交付金に替わる新たな財政支援の在り方や、地域経済の構造転換についても具体的な道筋を示すことが求められます。



(ブログ)福島原発事故と放射能汚染 そしてチェルノブイリ地方の現状