『新聞』であるなら、こうあって欲しい!!!

北海道新聞社説から全文引用。
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/320594.html
『首相国連演説 脱原発の後退許されぬ』(9月24日)

 菅直人前首相が掲げた脱原発の方針に比べると、明らかな後退だろう.
 野田佳彦首相が国連原子力安全首脳会合で行った演説のことである。

 「原子力の安全性を世界最高水準に高める」として、新興国や途上国への原発輸出の継続を強調した。一方で脱原発には言及しなかった。

 野田首相は国会の所信表明演説で「原発への依存度を可能な限り引き下げる」と述べた。国内では「減原発」を、海外では「原発輸出」を言う。これでは原子力政策をどのように進めようとするのか分からない。

 中長期的には脱原発を進め、安全・安心な社会を目指すべきだ。そうでなければ深刻な放射能汚染を引き起こした福島第1原発事故の教訓を生かすことにならない。
 首相は原発の輸出ビジネスを日本の成長戦略の一環として考え、脱原発に急速にかじを切ると大きな影響を与えると見ているようだ。
 演説では新興国や途上国に対し、原子力利用の技術協力でも積極的に貢献する姿勢を示した。

 ただ重大事故を起こした当事国から原発を輸入する国が多いとは思えない。経済成長に目配りするのなら、企業への配慮だけでなく、再生可能エネルギーの普及による地域振興などにもっと知恵を絞るべきだ。

 最高水準の安全性と言っても、肝心の事故の収束ができていない中、具体策を示さないと説得力を欠く。事故原因の検証をもとにした原発の安全対策の見直しもこれからだ。

 安全性を高めれば、重大事故は二度と起きないと断言することもできまい。根拠に乏しい安全神話を新たに生まないか気がかりだ。

 日本は地震が多発する特有のリスクがある。日本の原発の安全性には、国際社会からも厳しい視線が注がれていることを忘れてはならない。

 演説で聞きたかったのは今後のエネルギー・電力供給の姿である。

 首相は再生可能エネルギーの導入について「開発・利用の拡大を主導する」と述べたが、太陽光風力発電は電源としての安定性に欠けるとの指摘がある。

 電力会社による再生可能エネルギーの全量買い取り制度が来年から始まる。蓄電技術の向上や送電網の整備を含め、本格的な普及にはかなりの政策的な後押しが必要だ。そうした強い覚悟で取り組むべきだ。

 首相は中長期的なエネルギー政策を来年夏をめどに示すとした。

 各種の世論調査では自然エネルギーを拡大するとともに、脱原発を求める声が広がっている。
 国民から幅広く意見を聴く場を設け、その意思を反映させる仕組みを整えてもらいたい。