私の視点:2012衆院選/3 歴史の重み受け止めて=東京本社学芸部長・岸俊光{毎日新聞}

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私の視点:2012衆院選/3 歴史の重み受け止めて=東京本社学芸部長・岸俊光
毎日新聞 2012年12月07日 東京朝刊
http://senkyo.mainichi.jp/news/20121207ddm001010123000c.html
▼全文引用


 今年話題の本といえば、作家、赤坂真理さんの「東京プリズン」と、孫崎享(まごさきうける)・元外務省国際情報局長の「戦後史の正体」だろう。

 多くの書評で絶賛され、第66回毎日出版文化賞と第16回司馬遼太郎賞を受賞した「東京プリズン」。賛否の渦を巻き起こしながら、22万部のベストセラーとなった「戦後史の正体」。関係なさそうなこの2冊が、インターネット通販大手のアマゾンで「よく一緒に購入されている商品」なのはなぜなのか。

 孫崎書は、米国からの圧力を軸に「自主」と「追随」のせめぎ合いとして戦後を描く。追随派として殊にやり玉にあがるのが、講和・独立を担った首相、吉田茂である。当時の従米精神は今日も続いていると見るからだ。

 執筆の動機を孫崎氏はこう語る。「沖縄県民の多くが望む米軍普天間飛行場の県外移設がつぶされたのは不条理と感じたから。現在を理解するために敗戦から書き始めた」と。

 米国の関与で自主派の首相が次々に追い落とされたというくだりには首をかしげたくなるし、政治家の資質は別に論じるべきだとも思う。それでも反米の本と切り捨てては見えなくなるものがある。

 非難のなかで退陣した吉田の評価は、時と共に揺れ動いてきた。1960年代に「商人的国際政治観」を再評価したのは国際政治学者の高坂正堯(まさたか)だった。それが礼賛まで高まった背景には、高度経済成長があった。新冷戦の80年代には、右傾化を憂慮した政治学者の永井陽之助が「吉田ドクトリン」を唱える。

 「戦後史−−」は、実は沖縄でよく読まれているという。基地問題に対する今の怒りが伝わってくるようだ。

 長編小説である赤坂書の主題もまた米国と天皇制である。現代を生きる著者とおぼしき40代の作家、マリと、80年代に米国の高校に留学した少女のマリ。2人は時空を超えて心を通わせながら、16歳のマリは「天皇の戦争責任」をテーマとするディベートに加わる。

 東京裁判のような公開討論でマリは「天皇に責任はある」という立場を与えられ、そして気づくのだ。日本人が大きな宿題を果たさず生きてきたことに。

 「何十年も書かれたことがないならこの本はいらないんじゃないかと自信がなかった。必要だから、と校閲の人が言ってくださったことがうれしかった」

 先月開かれた毎日出版文化賞の贈呈式で赤坂さんは打ち明けた。
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