首相「輿石クーデター」封じで乾坤一擲の大勝負 最悪なら50議席も…{zakzak}

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首相「輿石クーデター」封じで乾坤一擲の大勝負 最悪なら50議席も…
2012.11.15
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20121115/plt1211151826012-n1.htm
▼「zakzak」から全文引用

 野田佳彦首相がついに「16日の衆院解散」を決断した。「近いうち」の約束から3カ月が過ぎ、野党からは「ウソつき」呼ばわりされ、党勢が低迷する民主党内からは退陣論が噴出。追い込まれる前に、乾坤一擲の大勝負に打って出た。決断の裏には「元首相の無念」と「裏切り者への怒り」がある。自民、公明両党は政権奪還のために師走選挙を歓迎するが、「最悪50議席になる」とされる民主党では閣僚経験者までが右往左往する醜態をさらし、第3極も準備不足に頭を抱えている。

 「後ろに区切りを付けて(1票の格差是正と定数削減の)結論を出しましょう。16日に解散します。やりましょう」

 14日午後の党首討論、こう宣言した野田首相の表情には高揚感が表れていた。この発言をきっかけに、永田町は「12月4日公示、同16日投開票」で、一斉に走り出した。

 実は野田首相は少し前まで元気がなかった。

 理由の第一は、沖縄県尖閣諸島の「国有化」が裏目に出たこと。対中強硬派として知られる石原慎太郎知事(当時)の東京都が購入することで日中関係が悪化しないよう、中国の外交当局とも相談して進めたが、中国共産党の権力闘争に巻き込まれ、日中関係は最悪となってしまった。

 さらに、「一蓮托生」と留任させた輿石東幹事長の裏切りに気付いた。輿石氏周辺が、野田首相を引きずり下ろし、細野豪志政調会長を後任首相とする党内工作(=クーデター計画)を進めているとの情報がもたらされたのだ。輿石氏の背後には、「国民の生活が第一」の小沢一郎代表の影も感じていた。

 このころ、公邸での「1升酒復活」などが報じられた。

 そんな野田首相が闘争心を取り戻したきっかけは、6日にラオスビエンチャンで開かれたアジア欧州会議(ASEM)首脳会議だ。野田首相尖閣諸島について「わが国固有の領土であり、解決すべき領有権の問題は存在しない」と発言し、中国の楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)外相と激しい応酬となった。

 これが日本で大きく報じられると、野田首相のもとには、「よく言った」「中国に負けるな」という激励の声が殺到した。その声を受け、野田首相は戦闘モードに突入したという。

 野田首相には、解散について新人時代の苦い記憶がある。

 1993年に日本新党衆院議員に初当選した野田首相は、細川護煕首相率いる非自民連立政権を支える与党の一員となった。だが、8党派参加の連立政権はうまくいかず、細川氏を引き継いだ羽田孜首相は、在任64日で総辞職に追い込まれた。官邸周辺はいう。

 「羽田氏は当時、解散するつもりだった。盟友の小沢氏にも話し、了解を得ていた。ところが、小沢氏は裏で動き、強引に総辞職に追い込んだ。羽田氏は涙をのんだ。野田首相はこれを教訓に『同じ轍は踏まない』と決めていた。今回、輿石氏と小沢氏の『野田降ろし密約』の情報を聞き、さらに戦闘意欲を高めたのだろう」

 野田首相は12日、輿石氏と国会内で会談した。輿石氏は「いま解散したら50、60人しか残らない」と年内解散に反対する意向を示しており、会談でも、常任幹事会の総意として「いま、解散すべきではない」と伝えた。会談後、野田首相はひどく荒れていたといい、こうした党内の動きが「解散」の決意を後押ししたのは間違いない。翌13日、野田首相は「明日の党首討論で解散の日付まで言う。これ以上、党内の反対論が強くなる前に決めたい」と、少数の側近に明かした。

 当初、22日解散も検討していたが、野田首相は18−20日の日程で東南アジア諸国連合ASEAN)関連首脳会議のためカンボジアを訪問する予定があり、留守中に「輿石氏らに寝首をかかれる恐れがあった」(官邸周辺)。そのため、前倒しで解散を宣言したという。

 野田首相としては「身を切る改革=議員定数削減」や「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定交渉参加」などを争点に次期衆院選を戦うとみられるが、とても計算通りにはいきそうにない。

 政党支持率が落ち込んだなかで選挙戦に突っ込めば、政権転落はおろか輿石氏が語ったように50議席程度しか獲得できない可能性も高い。民主党議員の中には、自らの生き残りをかけて、第3極などへの移籍を探る離党ドミノが加速しそうだ。

 民主党への失望を最初に招いた鳩山由紀夫元首相は14日夜、記者団に対し、野田首相を退陣に追い込みたいとの考えを示した。自身の離党の可能性については「さまざまなことを考えている」としたうえで、民主党の中でやっていくことは厳しいのではないかとの質問には「おっしゃる通りだ」と答えた。

 小沢鋭仁環境相も同日、大阪市橋下徹市長率いる「日本維新の会」に合流するため離党することが発覚した。大阪選出の中川治衆院議員も同夜、記者団に「次の選挙に民主党から出馬することはない」と明言した。

 TPP反対派の山田正彦農水相も「首相が交渉参加を表明したら、みんなで覚悟をもって次の行動に移る」と集団離党を示唆した。離党予備軍は15人前後とされる。

 2009年の政権交代以来、国民無視の党内抗争を繰り返し、東日本大震災福島原発事故、日米や日中関係などに適切に対応できなかった民主党政権は、最後まで醜態をさらし続けている。