【緊迫政権抗争】安倍新総裁を生んだ石原慎太郎の誤算<zakzak>
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【緊迫政権抗争】安倍新総裁を生んだ石原慎太郎の誤算
★(4)
2012.09.28
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20120928/plt1209280734002-n1.htm
▼全文引用
維新の公開討論会であいさつする橋下氏。風向きが変わり始めた=23日午後、大阪市内【拡大】
「日本維新の会(維新)」が早くも賞味期限切れの危機だ。「公開討論会」のお粗末さはひどかった。堺屋太一元経企庁長官の講義と、新鮮味のない候補者たちが「船中八策」と大阪市の橋下徹市長への忠誠を誓う決意表明をしただけ。「せめて、もう少し演出くらいしろよ」といいたい内容だった。
二度目には、ジャーナリストの田原総一朗氏が加わったが、橋下氏と2人のやりとり以外はどうしようもなかった。
「船中八策」の経済・社会政策には一貫した哲学が伺えないし、玉石混交で政権綱領としては粗すぎる。大体、堺屋氏と竹中平蔵元総務相という「不倶戴天の敵」に近かった2人がブレーンというのが象徴的だ。
それ以前にとんでもないのは、民主主義についてのひどい無関心だ。初回版「船中八策」について以前書いたことがあるが、「首相公選」「一院制」といった個別の提案はそれぞれに一理あるが、システム全体としてみたとき、ロシアのプーチン体制より独裁制的で低レベルの民主主義だ。
新しいバージョンでは、権限の弱い参院を残すニュアンスもあるが、アメリカのように明確な形の三権分立でもなく、国会における首相不信任もないことに変わりない。国会議員半減が加わったが、これは少数意見の封殺を加速する。
また、党では「拒否権」まで持つ独裁者でありながら、橋下氏自身が国会に議席を持たずに闇将軍として君臨し、国会での質問も受けないのでは国会は形骸化する。しかも、首班(首相)候補を示さずに衆院選に臨むというのも、首相公選制を目指す政党に似つかわしくなく支離滅裂だ。
橋下氏だけでなく、幹事長である大阪府の松井一郎知事も、政策ブレーンといわれる面々も国会議員になるつもりはなさそうだ。いまのところ集まりそうなのは、各政党に居場所がなくなった落ちこぼれ議員と、日本創新党の残党ばかり。新人も、選挙資金を自分の資産でまかなう仕組みしか提示されておらず、人材発掘は難航しそうだ。
小泉チルドレン、小沢ガールズに続く、「橋下ボーイズ」とか「橋下ベイビーズ」(こちらの方がふさわしい)とか称されるが、小泉純一郎氏や小沢一郎氏というリーダーがいてのチルドレンであり、ガールズだった。
橋下氏のいないベイビーズばかりの与党で、選挙を回避した民間人を主力にした内閣でも作るつもりなのか。それも、大阪市長にいちいちお伺いを立てねば、何も決められないということになるのだろうか。
■八幡和郎(やわた・かずお) 1951年、滋賀県生まれ。東大法学部卒業後、通産省入省。フランス国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任し、退官。作家、評論家として新聞やテレビで活躍。徳島文理大学教授。著書に「本当はスゴい国? ダメな国? 日本の通信簿」(ソフトバンク新書)など。