「原発5キロ圏内で子どもの白血病が倍増」フランス国立保健医学研究所が 国際誌にて発表/ルモンド紙(1月12日)<フランスねこのNews Watching

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2012年1月14日 (土)
原発5キロ圏内で子どもの白血病が倍増」フランス国立保健医学研究所が国際誌にて発表/ルモンド紙(1月12日)
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反論できない危険信号が発せられた。フランスにある原発の5キロ圏内に住む子どもたちは、通常の2倍の割合で白血病にかかる、という指摘だ。フランス国立保健医学研究所(INSERM)のジャクリーヌ・クラヴェル氏が率いるフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)の科学者研究チームが『国際がんジャーナル』(International Journal of Cancer)に発表した。これは過去にイギリスのセラフィールド原発スコットランドのドーンレイ原発、ドイツのクルーメル原発において実施された調査で、原発の近辺に住む子どもたちに通常より高い率で白血病が発生することが証明されたのに続く調査結果である(注)。

ラヴェル氏の研究チームは、2002年から2007年までの期間における小児血液疾患についての国家記録をもとに、白血病にかかった15歳以下の子ども2753人と、同様の社会環境で生活する同年代の子どもたち総数3万人を比較する統計学的調査を実施した。また、フランス国内の19箇所の原子力発電所について、その5キロ圏内に住む子どもたちと一般の子どもたちにおける白血病の発生率の比較を行った。これによれば、同原発から5キロ圏内に住む15歳以下の子どもたちは他地域の子どもたちに比べ白血病の発症率が1.9倍高く、5歳未満では2.2倍高くなっている。

フランス原子力安全庁(ASN)は昨年11月、原発近辺に住む子どもたちにみられる白血病の増加について、複数の研究を比較した結果、統計上の関連性は薄く増加を断定できないとの見解を発表していた。しかし今回の調査結果はこの結論をくつがえすものだ(注:今回の調査を実施した科学者が所属するIRSNはASNの下部機関)。

今回クラヴェル氏が発表した調査結果については、使用されている手法の正確性について、著名な統計学者たちが高い評価を行っている。科学技術を所管する国立工芸院のウィリアム・ダブ教授は、「(今回の調査は)対象人口の規模が大きく、かつ公式記録データの99%以上を徹底的に分析して抽出した質の高いデータを用いていることから、保健医療分野での道しるべとも言える価値の高い調査結果だ。最も注目するに値する非常に重要な調査であり、ドイツで行われた他の調査結果とも符合している」と述べている。

統計学事象間の関連を証明する手法である性質上、原発からの距離と白血病の発生率の間に相関関係があることを証明するが、「なぜ」原発の近くに住む子どもたちに白血病が多く発生するのか、という因果関係については調査の対象外となる。)クラヴェル氏は、今回の調査対象地域における原発からの放射線被曝量は、自然にある放射線量の平均に比べ約千分の一ほど低いことから、調査結果の原因を突き止めなければならない、としている。同氏はまた、居住地に応じた被曝量を推定するためにより多くの研究が必要であるとして、ヨーロッパ内の他の研究者に協力を呼びかけている。

(要約、一部編集)
(※1月16日に「トリカスタン原発」を「フランス国内の19箇所の原子力発電所」に修正しました。お詫びして訂正致します。)

(注)(参考)「欧州放射線リスク委員会による2010年勧告」関連箇所

●「被ばくにともなうガンのリスク 最近の証拠」(「ECRR2010翻訳委員会」翻訳、「美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会」発行)イギリスのセラフィールド原発に関する調査では、クリストファー・バズビー教授らが関わり成果をあげた。
http://www.jca.apc.org/mihama/ecrr/chap11r.pdf 

●「欧州放射線リスク委員会による2010年勧告」全文和訳はこちら(訳者・発行者は上に同じ)
http://www.jca.apc.org/mihama/ecrr/ecrr2010_dl.htm

(Paul Benkimoun, « Plus de leucémies infantiles près des sites nucléaires », Le Monde, 2012.01.12)