[外部電源喪失のウソ]津波でディーゼル発電機が水没しても「全交流電源喪失」を回避できたはずの福島第一

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[外部電源喪失のウソ]津波ディーゼル発電機が水没しても「全交流電源喪失」を回避できたはずの福島第一
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投稿者 あっしら 日時 2011 年 6 月 11 日 03:44:09: Mo7ApAlflbQ6s


私もだが、国民の多くは、この3カ月間、政府・東電が大手メディアと手を取り合って作り上げてきた“事故イメージ”とともに生きてきた。

「福島第一の事故はとてつもない大津波によって引き起こされた悲劇的原子力事故」というイメージがその最たるものであろう。
地震は大津波を引き起こした元凶ではあっても、放射能をまき散らし惨状を晒している福島第一の各原子炉は、地震には耐えて健全性を維持していたとも思わされてきた。

地震で1号機の原子炉圧力容器まわりに“穴”があき、注水不能と相俟って瞬く間に原子炉水位が低下し、地震から3時間ほどで全炉心が露出し、5時間ほどで全炉心がメルトダウンするという恐ろしいスピードで破局を迎えたにも関わらずである。


■ 鉄塔倒壊は「外部電源喪失」と無関係

今回の福島第一の事故では、[地震]外部電源喪失→[津波]全交流電源喪失が事故の発端のようにあっさり説明されているが、それはまやかしやゴマカシであり、その詳細はきちんと検証しなければならない。

まず、3月11日の地震発生時における原発内への電力供給状況の概略を説明する。

● 通常運転をしていた1号機・2号機・3号機は、原子炉の蒸気でタービンを回し発電していた電力を所内電源(常用電源:所内変圧器経由)として使っていた。

(停止中で炉心も引き上げられていた4号機は、3号機とペアなので4号機も所内電源を使っていたはず)

● 震度6強の揺れを感知した各原子炉がスクラム(緊急停止)したため、発電も停止し、外部への送電だけではなく所内への電力供給も停止した。

● これにより、本来ならば、自動的に、もう一つの常用電源である外部からの高圧交流が所内に引き込まれプラント全体に通電されるはずだった。


しかし、地震で送電線の鉄塔が倒れたから、それはできなかったという指摘もあるだろう。

福島第一が「外部電源喪失」に陥った理由が、国会で共産党の吉井代議士が取り上げたことで有名になった送電線の鉄塔倒壊にあるかのようなイメージも形成されている。

しかし、これもまったくのイメージでしかなく、せいぜいのところ、現在冷温停止状態にあるとされる5・6号機の「外部電源喪失」の原因でしかない。

(それも、5・6号機の高圧配電盤が1〜4号機から電力の融通を受けられる仕組みになっていれば原因とはならない。それは今現在の情報では不明)


今回の事故で破局へと進んだ1号機から3号機そして無残な姿をさらしている4号機は、外部電源を基本的新福島変電所からの「大熊線(1L〜4L)」(275kV)から受電するようになっている。
倒壊した鉄塔は、破局をまぬかれた5号機・6号機向け高圧送電線「夜の森線」(66kV)の鉄塔(No.27)で、同じ新福島変電所から出ているけれど「大熊線」のものではない。

確かに、「夜の森線」の鉄塔が倒壊したことで電線が接触するようなかたちになったため、新福島変電所の保護装置が働いた。しかし、それはあくまで「夜の森線」にかかわる部分だけだった。

ともかく、「夜の森線」を外部電源とする5・6号機は、外部電源喪失でありながらも、6号機の非常用空冷ディーゼル発電機が津波にも生き残ったことでなんとか冷温停止まで持ち込むことができた。

(鉄塔の倒壊も耐震基準を下回る揺れで起きたことだからそれ自体が大問題)


■ 1系統でも受電できればOKなのに6系統すべてがダメ

では、肝心な「大熊線」からの受電や予備送電線である東北電力東電原子力線からの受電はどうだったのだろうか。

話がわかりやすくなるよう、1号機を中心に説明する。

1号機の外部電源の受電は、「大熊線1L」から2号機と共有の「超高圧開閉所」(「1/2号機開閉所」:外部から来る高圧電流を制御する装置)を経由し常用高圧配電盤に通じるかたちで行われる。

そして、各号機の常用高圧配電盤は、3・4号機も含めお互いが接続されており電力が融通できる仕組みになっている。

「1/2号機開閉所」は、1・2号機の原子炉建屋の外にあり山側だから津波の影響は受けていない。
(3・4号機共有の「超高圧開閉所」(「3/4号機開閉所」)は津波の影響を受けたとのこと。原子炉建屋よりは山側だが「1/2号機開閉所」とは少し離れておりやや海側にある)

さらに、1号機は東北電力の「東電原子力線」(66kV)からも受電でき、「1/2号機開閉所」を経由して常用高圧配電盤に通じている。

※ 注1:このルートは東電と政府では説明が異なっている。東電は、独自の「東電原子力線受電設備」があり、「1/2号機開閉所」を経ずそこから直で1号機の常用高圧配電盤に通電するように説明している。


このような仕組みをまとめると、外部電源が最低いずれか1つの号機の常用高圧配電盤に通じれば、1〜4号機すべてに外部電源が通電することがわかる。

地震当日の3月11日は、「3/4号開閉所」内の「大熊線3L」受電設備を工事しており、「大熊線1L・2L・4L」・「夜の森線1L・2L」・「東電原子力線」の6系統から受電が可能であった。
「夜の森線1L・2L」は鉄塔倒壊で受電不能になったので除かなければならないので残り4系統になる。

5月16日以降に公表されたデータやプラントパラメータを見ると、1号機から3号機(4号機は記録装置の取替工事中でデータなし)及び5・6号機ですべての非常用ディーゼル発電機が地震後ただちに起動している。
その事実は、どの号機の高圧配電盤も外部電源を受電できなかったことを物語っている。

外部電源喪失の理由のように思われている鉄塔倒壊は5・6号機だけの問題で、1〜3号機は相互に融通できる条件にあるから、「大熊線1L・2L・4L」と「東電原子力線」のなかからどれか1系統でも受電できれば外部電源を喪失することはなかったことになる。

しかし、現実は、ただの一つも受電することができずに非常用ディーゼル発電機が起動し、約50分後に来襲した津波によりその電源も失われ、福島第一のすべてが全交流電源喪失に陥ったのである。

ここで確認しておきたいのは、外部電源がどこか1系統でも通電していれば、たとえ津波が来てタービン建屋が水没し非常用発電機が動かなくなっても無関係で工学的安全施設(ECCSなど注水及び冷却の設備)が稼働していたということである。

外部電源が通じているのだから、非常用ディーゼル発電機が起動することもない。

なお、東電は、常用高圧配電盤と常用パワーセンターについて、津波の被害を受けたと推定すると曖昧な表現でそれらが機能を失ったように説明している。
それが本当なら、津波で否応なく外部電源を失うことになるが、設置場所の明示から浸水(被水)レベルや損傷内容をきちんと検証し説明しなければ、津波のせいにする理由づけのようにも思われる。


■ なぜ、1系統も受電できなかったのか?

東電や政府は、外部電源を受電できなかった理由をそれなりに説明している。

5・6号機は送電線の鉄塔倒壊が理由だから省略する。
3号機も受電設備が工事中だったという理由で除外する。

4号機は、新福島変動所構内の鉄塔が傾き電線が鉄塔と接触したことで変動所の保護装置が働き送電が遮断されたため受電できなかったと推定されている。

1号機は、「1/2号機開閉所」にある「大熊線1L」受電用遮断器が壊れたために受電できなかったと推定されている。
そして、1号機にのみある予備の「東電原子力線」は、洞道に敷設され1号機の常用高圧配電盤につながるケーブルに不具合があり受電されなかったと説明されているが、敷設現場が確認できないから不具合の内容や原因が今もってわからないと説明している。

2号機は、「1/2号機開閉所」にある「大熊線2L」受電用遮断器に加え断路器も壊れており受電ができなかったと推定されている。

このように、福島第一は、地震で、原子炉のみならず電気設備もズタズタになり、たった1系統でも受電できれば(そのために多重化されている)、非常用ディーゼル発電機さえ不要だったのにどれ一つも受電できなかったのである。

新福島変電所でも、主要変圧器・遮断器・断路器・計器用変圧器・変流器が壊れている。

震源域のマグニチュードは9.0でも、直下型ではない震度6強の地震で、原子炉から電気設備までがボロボロに瓦解したという事実は、国民共有の認識にならなければならない。
それを知ったうえで原発をどうするのか、それぞれが判断しなければならないと考えている。


■ 電気系統にま&