中日新聞から全文引用

中日新聞から引用

4000人が反原発の輪 浜岡の周囲4キロ「人間の鎖
2011年11月27日

 中部電力浜岡原発御前崎市)の永久停止と廃炉を求める「11・26ひまわり集会in浜岡」が26日、同市内であった。参加した県内外の約4000人(集会事務局発表)が、海側を除く原発敷地の周囲約4キロを囲んで手をつなぎ、「人間の鎖」をつくって反原発を訴えた。

 7月に静岡市葵区駿府公園で、約800人(同)が参加した集会の第2弾。県内の市民団体代表や弁護士、大学教授ら12人が発起人となった。

 原発近くの広場で開いた集会では、発起人代表の林克県労働組合評議会議長が「世界一危険な浜岡原発の永久停止を求める。国と中電にわれわれの意思を示し、全国に連帯ののろしを上げよう」と声を上げた。廃炉を求める原告団の地元代表や原発事故があった福島県の団体代表らも訴え、原発の再稼働を阻止し、各組織の力を結集して永久停止と廃炉の運動を推進することを宣言した。

 反原発を象徴するヒマワリの造花を身に着けた参加者は「原発ゼロ」などと書いたプラカードや横断幕を手に原発までパレード。原発を囲むように手をつなぎ「浜岡原発はいらない」と意思を示した。

 掛川市の瀬崎睦子さん(76)は「福島の事故は人ごとではない。一刻も早く浜岡を廃炉にしてほしい」と話した。約90人で参加した浜岡原発はいらない磐田の会代表の野沢正利さん(67)=磐田市=は「原発の危険性を再認識した。これからも反対運動を進めたい」と語った。



使用済み燃料行き場なし 浜岡原発に6625本

2011年11月20日

 全面停止から半年が過ぎた中部電力浜岡原発御前崎市)で、放射性物質を含む使用済み燃料の処理が重要課題に浮上してきた。安全な処理は、川勝平太知事が再稼働の条件に挙げる。しかし、国の核燃料サイクルの根幹となる再処理施設の稼働は先が見えず、中電が計画する使用済み燃料貯蔵施設も福島第一原発事故で見通しが立ちにくい状況にある。(福田大展) 

 中電によると、浜岡原発にある使用済み燃料は8月末現在、燃料集合体で6625本、ウラン量で1126トン。原子炉建屋にある燃料プールの水の中で、臨界によって生じた熱が冷めるまで置かれる。

 3〜5号機が再稼働した場合、年間80トンの使用済み燃料が発生する見込み。青森県六ケ所村で試験運転中の国内唯一の再処理工場が稼働しても、浜岡からの受け入れ量は年間70トン。それを超える年間10トンを管理していく必要がある。

 中電は1、2号機の廃炉と6号機の新設という「リプレース(置き換え)計画」を発表した2008年12月、使用済み燃料の貯蔵施設を敷地内に建てる計画も立てた。再処理を超える燃料と、1、2号機にある燃料の置き場を確保するため。原発の外に用地を求めると時間がかかるとの判断もあった。

 貯蔵容量は700トン。建設には3年程度かかり、16年度に使用を始める計画。経済産業省総合資源エネルギー調査会の作業部会会議録によると、中電は10年度の許可申請を目指していた。

 中電は中日新聞の取材に対し、09年度に着手した地質調査を11年度上半期にほぼ終え、データ分析などの準備が整えば、国に安全審査を求めると説明した。ただ、福島第一原発事故で環境は様変わりし、東海地震震源域に立つ浜岡原発への目は厳しくなった。

 中電は、国による原子力安全庁新設や手続き改正もにらんで対応する考え。「環境的には厳しいが、目標年度に向けて頑張りたい」と強調する。

 中電は再処理と敷地内貯蔵を合わせて「25年分は計画がある」としているが、貯蔵された燃料は6ケ所村の施設の後継となる「第2再処理工場」に運ぶことが前提になる。

 だが、六ケ所村の再処理工場はトラブル続きで20回近くも計画延期を繰り返し、再処理で生まれる高レベル放射性廃棄物を埋設する最終処分場は候補地が決まっていない。中電の原子力部幹部は「再処理できなければ、日本で原子力をやる大きな意味がなくなってしまう」と話すが、“核のごみ”の置き場所がない状態が福島第一原発事故後も続いている。
埋設は非常識

 京都大原子炉実験所の小出裕章助教の話 再処理工場が稼働するめどは立っておらず、高レベル放射性廃棄物を地中に埋めるなんてもってのほか。使用済み燃料の中の核分裂生成物は膨大な危険をはらんでいる。100万年閉じこめなければいけないが、現在の科学では保証できない。

 使用済み燃料 原子炉で使用された後の燃料棒。複数本をまとめた燃料集合体の状態で管理される。福島第一原発事故では、当初4号機の使用済み燃料プールが原因で水素爆発したとみられていたが、東京電力は10日、爆発した水素は3号機から配管を通って流入したとの見解を発表した。

 使用済み燃料の貯蔵施設 中電が採用するのは、青森県むつ市の施設と同じキャスク方式。原子炉建屋のプールで冷やされた燃料を金属製容器に収容し、専用建屋で貯蔵する。容器には水が入らず、表面熱を自然な空気の流れで冷やす。乾式貯蔵と言われる。



4市対協、議論進まず 浜岡停止から半年

2011年11月17日

9月26日、牧之原市議会。「浜岡原発の永久停止を求める決議」が可決されると、傍聴席に集まった市民らから拍手が湧いた。続いて西原茂樹市長が、浜岡の永久停止を求める考えを表明した。

 海抜18メートルの防波壁建設など津波対策を施した後、早期の再稼働を目指す中部電力。しかし、再稼働には地元自治体の同意が欠かせない。工事着工の4日後。牧之原市の議会と市長が突きつけた「永久停止」は、中電にとって極めて重い“通告”だった。

 「われわれはこれまで、原発の問題を国任せにしてきた。何もなければそれでよかったが、今後は自分たち自身で判断する必要がある」

 西原市長は永久停止表明後、こう語った。福島第一原発の事故で崩れた原発安全神話。市民の暮らしを守ることに加え、産業や経済の視点からも再稼働を認めがたい理由が同市にはある。

 浜岡原発から約11キロの同市白井にあるスズキ相良工場。年間100万台超の四輪エンジンを生産する拠点工場だが、浜岡で事故が起きれば大打撃は避けられない。東日本大震災後、リスク分散のためスズキは同工場の機能を湖西工場に移転させる検討を始めた。相良工場の従業員は約1800人。裾野が広い自動車産業だけに関連工場も多い。「このままでは産業が空洞化してしまう」。牧之原市に危機感が広がった。

 「永久停止はよい選択だった。牧之原は原発で潤っていたわけではない。スズキが出て行ってしまったら、それこそ市全体が寂れてしまう」。原発から約5キロの同市地頭方の区長を務める原崎久春さん(64)は、議会と市長の判断を評価する。

 牧之原市の税収のうち、スズキが納める税金の割合は2割弱を占める。一方、2011年度に同市が受け取った原発関連交付金は約1億2500万円で、一般会計の1%に満たない。原発立地市として多額の交付金を得てきた御前崎市とは財政構造が異なっている。

 永久停止決議を受け、牧之原市に寄せられた電話やメールは300件を超えた。市によると、ほとんどは賛成の意見。メールは14日までに185通あり、そのうち166通は賛成だった。

 牧之原市民に支持されている永久停止。だが、御前崎には衝撃が走った。御前崎市議会は「表明は意外で困惑している」と強く反発。石原茂雄市長は牧之原の事情に配慮しながらも「事前に説明がほしかった」と苦言を呈した。

 御前崎、牧之原、菊川、掛川の4市で構成する浜岡原発安全等対策協議会(4市対協)。御前崎の石原市長は「足並みが乱れているとは思っていない。今後も4市対協の役割は重要だ」と協調路線の継続を主張する。

 牧之原の西原市長も「議論は拒まない。どんどんやっていく」と、4市対協の場での議論を尊重する姿勢を示す。しかし、続けてこう語った。「最終的に『再稼働』との結論になれば、住民投票などで判断したい」

 4市対協は浜岡停止以降、議論の材料がないとして一度も開かれていない。




存廃、割れる民意 浜岡停止から半年
2011年11月15日

再稼働あり得ぬ

御前崎市中心部にあるショッピングセンター。量販店の閉店後、半年たっても次のテナントが入らない=同市池新田で(斉藤直純撮影)
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 「風評被害で日本一危ない街になってしまったかのようだ」−。御前崎市商工会の阿形好男会長(64)は、月刊誌の「団塊が住みやすい街」ランキングで全国3位に入った4年前を懐かしむように言った。中部電力浜岡原発(同市)が停止して半年。「ホテルや飲食店の落ち込みが目立ってきた。何より市民が疑心暗鬼に陥っている」。いまだ収束しない東京電力福島第一原発の事故が、市民に原発の安全性を問い続ける。

 市中心部の池新田地区にあるショッピングセンター。スーパーや家電店、衣料品店が並び、週末には家族連れでにぎわう。買い物に訪れた主婦(58)は「原発停止は驚いたけど、今のところ生活に影響はない。でも何となく重苦しい空気があるのは確かね」と話す。別の主婦(37)も「マイナス感覚だけが広まっていて、街が少し寂しい。向こうのテナントも空いたままだし…」。

 視線の先には、4月末で閉店した大型量販店の跡。「大手家具チェーンや量販店の出店話があったが、まだ決まっていないはず」と話すのは市内の不動産業者。進出計画を聞いたのは東日本大震災前で、市内では浜岡原発6号機建設による好景気が期待されていた。「今となっては原発を再稼働させないと市が宣言しない限り、テナントの入居は難しい」と指摘する。

 9月に公表された基準地価で、御前崎市は住宅地、商業地ともに大幅下落した。不動産賃貸業の男性(58)は「値段が下がっても買い手がつかない土地も出てきた。福島の惨状を見れば、浜岡の永久停止も考えざるを得ない」と訴えた。

 原発のリスクは茶業界にも及ぶ。「地元のお茶の品質は悪くないのにさばけない」と嘆くのは産地問屋の男性経営者(57)。7月以降の売り上げは4割減。福島第一原発の事故後、県産の茶から放射性物質が検出され、消費が冷え込んだ。この男性は2年前に浜岡原発のモニターを務め、安全性に異議を唱えたが取りあってもらえなかった。「いつかこんな事態になると感じていた。もう再稼働はあり得ない」

 しかし、総じてみると、浜岡原発の永久停止を求める市民の声は大きくはない。

 ある茶農家の男性(67)は、市民の気持ちを代弁する。「原発は財政が乏しかった旧浜岡町がもろ手を挙げて迎え入れた。今になって反対することは心情的にできない」。1号機の営業運転開始から35年。交通が不便で“陸の孤島”と揶揄(やゆ)された町に道路や下水道が整い、総合病院や図書館も建った。

 「産業がなく、イモや落花生、果樹ぐらいしか取れない町で、職員の給料を工面するのも大変だった」。浜岡町役場企画室長として1号機立地を担当した後、3期12年にわたり町長を務めた鴨川義郎さん(84)は「町が繁栄できたのは原発のおかげ。受け入れは正しかった」と言い切る。福島第一原発の事故は東電が安全対策を怠った結果と指摘し、中電が浜岡原発で行ってきた耐震工事などを評価する。「原発を非難する声は過剰反応。永久停止を求める市民は多くはない」

    ◇

 中部電力菅直人首相(当時)の要請を受け、浜岡原発を停止させてから14日で半年。中電は来年12月の完成を目指して防波壁の建設工事を進めているが、周辺自治体の議会や首長が「永久停止」を求めるなど、再稼働に向けたハードルは高い。原発のまちの今を追った。
浜岡原発をめぐる動き 

5月6日 菅直人首相(当時)が全面運転停止を要請

  14日 中部電力が全面運転停止を完了

  27日 地元住民らが「永久停止」を求め静岡地裁浜松支部に提訴

7月1日 弁護士らが「運転終了」と安全な廃炉処理を求め静岡地裁に提訴

  22日 中電が海抜18メートルの防波壁新設などの津波対策を発表

9月22日 防波壁の新設工事が始まる

  26日 牧之原市議会が「永久停止」を求める決議。西原茂樹市長も「永久停止」表明

10月26日 川勝平太知事が全面停止後初の訪問で防波壁工事を視察

11月11日 防波壁本体工事着工。中電の水野明久社長が御前崎市の石原茂雄市長と会談




浜岡停止の署名100万筆 静岡の団体が2004年から活動
2011年11月10日

首相・経産相に提出へ
 中部電力浜岡原発御前崎市)の運転停止を求めて署名活動してきた市民団体「原発震災を防ぐ全国署名連絡会」(静岡市駿河区)は9日、署名が100万筆を達成したとして、静岡市内で報告会を開いた。浜岡原発の永久停止に向け、新たに廃炉作業で雇用を確保することなどを提言した。

 同会は2004年から署名活動をスタート。哲学者の梅原猛氏ら著名人が賛同人となって全国でイベントを開くなどしながら署名を募り、署名数は今月9日現在、100万1726筆。メンバーが17日、経済産業省を訪れ野田佳彦首相、枝野幸男経済産業相あてに提出する予定。

 報告会では冒頭、県職労連合会長でもある鈴木修会長が「100万筆を超え、浜岡を止める目標は達成できたが、将来の危険は残っている。署名は終了し、永久停止を求めて活動する」とあいさつ。この後、元原発技術者の2人が提言した。

 渡辺敦雄・沼津工業高専特任教授は「地元の雇用は、廃炉作業で10年間、その後は新エネルギー発電所の建設で確保できる」と指摘。元ゼネラル・エレクトリック社員の菊地洋一さんは、浜岡原発に建設中の防波壁について「砂丘の上につくる防波壁はもたない。自然の脅威を軽く見ている」と批判した。




浜岡原発はいらない」 市民有志が「湖西の会」結成へ
2011年11月17日

 湖西市の市民有志が、浜岡原発御前崎市)の廃炉を求める「浜岡原発はいらない湖西の会」を結成する。発起人らは「市内の世論を盛り上げ、自然エネルギーに転換するための息の長い活動をしていきたい」と意気込んでいる。

 「湖西の会」は、県内の弁護士らが浜岡原発の運転終了と廃炉を求めた訴訟に、同市新居町の河西尚章さん(68)が一般市民として公募に応じたのがきっかけ。新聞記事を見て原告団に加わった河西さんが「地元でも声を」と市内で賛同者を募り始めた。

 会では、特定のグループに偏らないように賛同者を広く募り、意見交換や催しを企画していく。河西さんは「浜岡から60キロ離れている湖西市も決して安全ではない」と言い、「声を上げないことは原発を容認しているのと同じ。今やらなければ、必ず孫の代から批判されて後悔する」と話す。現在11人いる「呼びかけ人」には、三上元市長も名を連ねている。

 27日午後1時半から、同市新居町の新居地域センターで設立総会をする。放射線被ばく治療に取り組んでいる「きたはま診療所」(浜松市浜北区)所長の医師、聞間(ききま)元さんが「原発事故と放射能」と題して記念講演する。問い合わせは、河西さん=電053(594)0487=へ。 (南拡大朗)