指定廃棄物処分 机上の決定では難しい【社説】<東京新聞 2014年1月22日>

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指定廃棄物処分 机上の決定では難しい【社説】
2014年1月22日
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▼全文転載


 放射能を持つ指定廃棄物の最終処分場候補地として、環境省宮城県内三市町の名を挙げたが即座に反対された。処分場は必要だが、住民の頭越しにすることなのか。ますます復興が遅れてしまう。

 指定廃棄物とは、福島第一原発事故で飛散した放射性物質が付着したごみの焼却灰、下水汚泥、稲わらなどをいう。環境相の指定により、国の責任で最終処分することになっている。

 原発から排出されるものに比べると、放射能の濃度は低く、全国各地で十三万トン余りが仮置きされている。

 環境省はその最終処分場を、宮城、栃木、群馬など東北と関東の五県に一カ所ずつ、造る計画だ。

 宮城県で選定された三市町から、人が住まず、訪れず、水源から遠く離れて自然への影響の少ない場所へとさらに絞り込む。

 ごみ処理施設は、家庭ごみでさえ立地が難しいことは、全国のどの自治体も、また住民も知っている。その成否は、事業者と受け入れ側住民が、いかに信頼関係を築くかで決まると言っていい。

 世界で初めて使用済み核燃料最終処分場「オンカロ」の建設が進むフィンランドのオルキルオト島でも、処分事業者は、全国を百二カ所のブロックに分けて調査を重ね、選定までに十八年をかけている。結局は、地元に原発があり、比較的原子力への抵抗感が少ないオルキルオトが選ばれた。

 これまでに過酷事故もなく、規制機関への信頼も厚い国柄でも、そうなのだ。

 復興を進めるためにも、処分が必要なのはよく分かる。しかし日本では、福島の事故で神話は崩れ、信頼は地に落ちた。何より事故処理がまだ進んでいない。3・11の被災地にはもちろん、全国的にも原子力行政に対する信頼が、失われているのである。

 核のごみ処理をもし受け入れるとしたら、何が一番必要かと問うと、「確かな情報」とまず答える人が多いのではないか。

 金ではない。フィンランドでも、オンカロ受け入れの見返りに、巨額の交付金などは出ていない。

 なぜその場所なのか、規模は、工法は、危険性は、管理の主体は、スケジュールは…。こうした疑問に答えられるような能力を持ち、面と向かって答えられるほどの信頼を積み重ねてもらいたい。

 すでに大量に発生している高レベル放射性廃棄物の処分についても、同じである。



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