【函館市の提訴】原発周辺の「声」も重い<高知新聞 2014年04月>

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函館市の提訴】原発周辺の「声」も重い
2014年04月05日08時00分
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 福島第1原発事故では周辺の多くの住民が避難を強いられた。その状況を考えれば、市民を守るために北海道函館市が提訴したのは自然なことだ。
 電源開発(Jパワー)が青森県大間町に建設中の大間原発をめぐり、函館市は国や同社に建設中止などを求める訴えを東京地裁に起こした。
 函館市は、津軽海峡を挟んで大間原発から最短で約23キロ北に位置する。福島のような過酷事故が起これば、住民避難に加え、水産や観光業など主要産業は大打撃を受ける。市民生活の崩壊は容易に想像できる。
 にもかかわらず、原発立地自治体でないため建設時の意思決定に参加できなかった。工藤寿樹・函館市長は原発事故後、建設凍結を国などに求めてきたが、聞き入れられなかったために自治体初の差し止め訴訟に踏み切った。
 全国には函館市と同じような状況に置かれてきた自治体は少なくない。原発立地自治体と同じリスクを背負わされながら、肝心な意思決定は「蚊帳の外」。これで首長は住民の命と安全に責任を持てるだろうか。
 今回の提訴で重要なポイントは、函館市のように原発から半径30キロ圏内の自治体も原発建設の同意対象とするよう求めた点だ。
 福島の事故後、政府は住民の避難計画作りを自治体に義務付ける範囲を30キロ圏まで拡大した。万が一に備えた事前対策が求められるのであれば、原発建設に自治体として意見が言えて当然だろう。
 しかし、同意を求められるのは立地自治体とその都道府県で、事故前と何ら変わらない。函館市が手続き変更を求めるのももっともだ。
 一方、今後の裁判で国やJパワーは函館市には提訴する資格がないと主張し、裁判所に訴えを門前払いさせる作戦に出る可能性も指摘されている。
 そうなれば函館市を含めて原発周辺自治体の住民は納得しないだろう。再稼働でも同じ問題があり、函館市や国が意見を述べ合うことが、原発の在り方を国民に問うことになる。
 異例の提訴は函館市議会が全会一致で決定し、工藤市長は「声を上げないのは原発で何が起きても泣き寝入りするということ」と取材に述べている。
 再稼働問題も絡み、提訴の行方に多くの国民が関心を持っている。原発周辺の住民の「声」を、司法がどう判断するのか注目したい。


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