核のごみ処理 注目したい学術会議案【社説】<東京新聞 2014年1月30日>

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核のごみ処理 注目したい学術会議案【社説】
2014年1月30日
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▼全文転載

 長期間、強い放射線を出す使用済み核燃料、核のごみの処分について、日本学術会議が具体的な検討を開始した。最終処分を考える前に、まず暫定保管をどうするか。私たち自身の問題でもある。
 使用済み核燃料から再利用できるウランとプルトニウムを抽出する。それが再処理。搾りかすの液体をガラスで固め、金属製の容器に入れて、地中深くに埋める。
 政府は再処理、再利用が前提の核燃料サイクル計画破綻後も、地層処分の方針を変えてはいない。
 科学者の立場から役割を担う日本学術会議は一昨年九月、独自に「暫定保管」を提案し、私たちも支持している。
 核のごみを数十年から数百年、処分ではなく、いつでも取り出せるように保管しながら、並行して安全に処分できる新技術、方法を探す。技術が確立するまでは、核のごみを増やさない「総量管理」の必要性も唱えている。
 人体に影響のないレベルになるまでに十万年。そんな先まで地中の変化を予測できないという、科学者の良心に基づく提言だ。
 ドイツの地層処分候補地だったゴアレーベンでは、想定しない地下水脈が見つかって、白紙撤回を決めたばかりだ。火山も水脈も多い日本で適地は見つけがたい。
 処分場候補地の選定は、全国の電力会社などで組織する原子力発電環境整備機構(NUMO)が、自治体から立候補を募る公募方式を採ってきた。開始から十一年。最大二十億円の交付金が出るにもかかわらず、進展がない。
 政府は昨年末、国が複数の適地を選び、直接自治体に受け入れを求める積極関与を表明した。
 福島事故の処理や補償が進まず、国、電力会社への不信がなくならない現状では、候補地の名前が挙がっただけで、大混乱を招くだろう。
 だとすれば、現状では学術会議が言うように、最終処分の看板は掲げず、再処理せず、冷却装置付きの容器に入れるなどして厳重に暫定保管するしかない。だが、どんな方法か、コストは、場所は、検討はこれからだ。
 総量管理の観点からは、少なくとも最終処分の方法が決まるまで、原発の再稼働はすべきでない。だが、すでに出してしまった膨大な核のごみは無視できない。
 学術会議は九月には、技術課題や合意形成についての見解をまとめるという。国民的議論のたたき台として国も注目すべきである。


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