災地の子ども 心の悲鳴に耳澄まそう【社説】<東京新聞 2014年2月3日>

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災地の子ども 心の悲鳴に耳澄まそう【社説】
2014年2月3日
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▼全文転載

 

 東日本大震災被災地で子どもたちの暴力や引きこもりが目立っている。震災の喪失体験などが心の傷となり、行動に影響している。ケアには医師ら専門家のほか、NPOなどの力も借りたい。

 宮城県石巻市の小学校に勤める女性教師は震災後、子どもたちが落ち着かないと感じてきた。

 津波で校舎が流れた沿岸部の学校は他の学校を間借りしたり、仮校舎を使って手狭な状態が続く。その中で子どもたちはすぐにけんかを始める。教師や友達に対して暴力的な言葉を吐いたりする。震災から三年になろうとする今、とくに中学では転校を機にした不登校も増えている。

 大震災で地震に脅(おび)え、津波を目撃し、原発被害にさらされた。そんな過酷な体験が後の行動にどう影響を与えていくのか。国立成育医療研究セ ンターの藤原武男研究所部長らが被災地で行った調査では、四人に一人の子に問題が表れていた。被災地の深刻さをはっきりと裏付ける結果だった。

 調査対象は、震災当時に岩手、宮城、福島の沿岸部の保育園で三~五歳児クラスにいた約百八十人と保護者。面接とアンケートを行い、震災でどんな体験が心の傷になったのか、情緒や社会性にどんな問題が起きているかを探った。

 「暴力をふるう」「爪をかむ」「よく泣く」「引きこもる」などの問題が25%に表れた。比較のために三重県の同年齢群を同時に調べたところ、行動に問題を持つ子は標準的な8%だった。

 心の傷となっているのは、大切な人を失ったり、家を流されたりした「強烈な喪失体験」のほか、震災時に親と一緒にいられなかったことなどが目立つ。

 だが、子どもは震災で大事なものを失っても、怒りや恐怖をうまく言葉に出せない。

 問題を見過ごされがちなのは、友達を亡くした子や、家が半壊した子らのケースだ。喪失のつらさを経験しているということでは変わりはないはずだ。

 友達や家族の間で震災の話題を避けようとする子もいる。元気そうにみえても、緊張やストレスは続いているのだ。

 国は津波被害の大きかった地域に学校心理士を重点的に派遣し、教員を増やしてきたが、支援は追いついていない。医師や心理士らだけでなく、音楽活 動や読み聞かせをするNPOやボランティアなどにもかかわってもらい、周囲の大人たちが子どもたちの心の傷を癒やしていきたい。


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