派遣見直し案 企業の論理でしかない【社説】<東京新聞 2014年2月1日>
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派遣見直し案 企業の論理でしかない【社説】
2014年2月1日
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▼全文転載
同省の審議会がまとめた案では、企業が派遣労働者を継続して雇える期間について、一つの業務で「最長三年」という上限をなくし、人を変えれば何年 でも派遣労働のまま使い続けられる。これにより企業は派遣労働を一層使いやすくなり、正社員から派遣への置き換えも加速しかねない。
働く側からみると、現在通訳や秘書など専門二十六業務は期間の制限がなく、それ以外は最長三年だが、この業務区分が撤廃される。どんな仕事でも、一人の派遣社員が同一派遣先で働ける期間は最長三年となる。
ただし、人材派遣会社との間で無期契約を結べば、どの業種でも無期限で働き続けられる。とはいえ、人材派遣会社にどれだけ無期契約を結ぶ余裕があるかは分からないのが実態だ。
案ではまた、人材派遣会社に対して計画的な教育訓練や能力開発の相談にのるなど派遣労働者のキャリアアップ支援を求めたが、これも人材派遣会社の体力や能力次第である。大手は栄えるが、中堅以下は負担の増加に耐えられずに淘汰(とうた)が進む可能性がある。
結局、今回の見直し案を貫いている考え方は、企業にとって人件費をいかに抑え、使い勝手の良い派遣労働制度にするかという資本側優先の論理であ る。「世界で一番企業が活動しやすい国」を目指す安倍政権らしいが、働く人にとっては「世界で一番不幸な国」と感じてしまうような希望を持てない改悪であ る。
企業の国際競争力とか多様な働き方という美名の下に派遣やパートなど非正規労働は増え続け、働く人の約四割に達する。過去には雇用の調整弁のように非人間的に扱われ、無差別殺傷事件なども起きたのに、そんな不幸な出来事などなかったかのようである。
厚労省の調査で、派遣労働の六割超が「正社員として働きたい」と安定雇用への転換を望んでいる。しかし、今回の案は、その切実な願いを完全に裏切るものだ。派遣労働の固定化を一段と進めることはあっても、正社員化を促す決め手はどこにも見当たらないのである。
働く人の尊厳が守られるよう、今後の国会審議などを通じて「見直し案」の見直しを求めたい。
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