NHK経営委員 公共放送の信用損なう【社説】<東京新聞 2014年2月6日>

東京新聞 TOKYO WEB
トップ >http://www.tokyo-np.co.jp/
NHK経営委員 公共放送の信用損なう【社説】
2014年2月6日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014020602000125.html

▼全文転載

 南京大虐殺を否定する、新聞社で自殺した右翼団体幹部を称(たた)える追悼文を書く…。新たなNHKの二人の経営委員が、そんな言動をし、議論を呼んでいる。公共放送の信頼性が疑われる重大事態だ。

 「戦争に負け、連合国軍総司令部が、徹底した自虐思想を植え付けた」「東京裁判で突然、亡霊のごとく南京大虐殺が出てきた」と語ったのは、作家の 百田尚樹氏だ。南京大虐殺については「そんなことはなかった」と否定もした。しかも、東京都知事選の立候補者の応援演説の場だった。

 埼玉大名誉教授の長谷川三千子氏は「女性の一番の仕事は子どもを生み育てること」などとコラムに書き、男女共同参画社会の推進を誤りだと主張した。長谷川氏は、朝日新聞社内で拳銃自殺した右翼団体幹部について、「神にその死をささげたのである」と追悼文も発表していた。

 二人とも「個人の思想信条は認められて当然」「全く問題ない」と開き直っている。菅義偉官房長官も記者会見で「放送法に違反しない」と二人を擁護した。

 だが、NHK経営委員会の服務準則は、放送が公正、不偏不党な立場で、民主主義の発達に資することなどに自覚を求め、誠実に職務すべきことを定めている。同時にNHKの「名誉や信用を損なうような行為をしてはならない」と明記している。

 二人の言動は、信用を損なう性質を帯びていないか。南京大虐殺東京裁判の歴史をひっくり返す言説は、あまりに極端である。新聞社に拳銃を携え、抗議に行った右翼を称賛しては、言論の自由をメディア自身が封じることにつながる。容認できるものではない。

 会長の任命を含め、執行部に対する「個別事項に関する説明要求」など、経営委員会は強大な権限を握る。既にNHKの現場では、脱原発論者の出演を取りやめる事態が起きている。

 「放送法に妨げられない」という論法がまかり通れば、今後も次々と問題発言が飛び出しかねない。国内外で「中立・公正」に疑問符が付いて見られよう。二人は「安倍カラー」と呼ばれた人選だ。任命した首相にも、人事に同意した国会にも責任はある。

 放送法には委員に適さない非行があれば、首相が両議院の同意で罷免できる定めがある。

 少なからぬ人が首をかしげるようでは困る。視聴者の信用をもし失えば、損失はNHKにとどまらないだろう。


東京新聞 TOKYO WEB トップ >http://www.tokyo-np.co.jp/

東京新聞:試読フォーム:東京新聞購読のご案内(TOKYO Web)

松尾貴史の東京新聞の楽しみ方|東京新聞ほっとWeb

北から南まで、地域密着の最新ニュースを! ニュースクリップ

 

 

★関連ブログとホームページ

福島原発事故と放射能汚染 そしてチェルノブイリ地方の現状{北の山 じろう}

福島原発事故と放射能環境汚染・食品汚染・健康被害、チェルノブイリ関連情報案内所

福島第1原発事故と原発問題、チェルノブイリ原発事故関係情報案内所