NHK会長発言 公共放送の信頼損ねた【社説】<東京新聞 2014年1月28日>

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NHK会長発言 公共放送の信頼損ねた【社説】
2014年1月28日
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▼全文転載

 そもそも適任だったのだろうか。NHK新会長、籾井勝人(もみいかつと)氏である。経済界からの就任だが、放送の役割を深く理解しているとは言い難い。公共放送の信頼を損ねたのなら、退場願うしかあるまい。

 籾井氏は、NHKが従うべき放送法第一条の「目的」に掲げられた「不偏不党」の意味を取り違えてはいないか。例えば、昨年暮れの臨時国会で与党が強行可決した特定秘密保護法である。

 籾井氏は就任会見で「一応(国会を)通っちゃったんで、言ってもしょうがない。政府が必要だと言うのだから、様子を見るしかない。昔のようになるとは考えにくい」と述べた。

 同法は、防衛・外交など特段の秘匿が必要とされる「特定秘密」を漏らした公務員らを厳罰に処す内容だが、法律の乱用や人権侵害の可能性が懸念されている。

 にもかかわらず「昔の(治安維持法の)ようになるとは考えにくい」と言い張るのは、一方的な見解の押し付けにほかならない。

 秘密保護法を推進した安倍晋三首相側への明らかなすり寄りで、もはや不偏不党とはいえない。

 首相の靖国神社参拝も同様だ。籾井氏は「昔の人は『死んで靖国に帰る』と言って心を慰めた。千鳥ケ淵(戦没者墓苑)ではだめだという人が大勢いる」と述べた。

 賛否が分かれても、時の政権の主張に唯々諾々と従うことを、不偏不党と考えているのだろうか。

 さらに、籾井氏は「従軍慰安婦は今のモラルでは悪いが、現実としてあった。戦争地域ではどこでもあったこと」とも語った。

 女性の人権を著しく蹂躙(じゅうりん)した従軍慰安婦の存在を、戦争中という理由で肯定的にとらえるのは、公共放送のトップとしての見識が疑われても仕方があるまい。「個人の発言」では済まされない。

 心配なのは、籾井氏の会長としての資質に加え、会長や安倍内閣寄りの委員が加わった経営委員会の考えを忖度(そんたく)し、制作現場が萎縮したり迎合したりして、放送内容が政権寄りに改変されることだ。

 NHKは視聴者の受信料と信頼で成り立つ、民主主義国家たる日本の公共放送だ。どこかの専制国家の国営放送のように、権力側の言い分を押し付けるのなら存在意義はない。

 良識あるNHK職員には奮起を促したい。放送法第一条「目的」の三項にはこうある。「放送に携わる者の職責を明らかにすることによって、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること」


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