中部電:首都圏で売電 越境先駆け、競争激化へ<毎日新聞>

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中部電:首都圏で売電 越境先駆け、競争激化へ
毎日新聞 2013年08月07日 21時03分(最終更新 08月07日 22時09分)
http://mainichi.jp/select/news/20130808k0000m020084000c.html
▼全文転載


 中部電力は7日、三菱商事の100%子会社で電力小売り事業を手掛ける「ダイヤモンドパワー」(東京都中央区)を買収したうえで、静岡県富士市に石炭火力発電所を新設し、域外の東京電力管内を対象に電力販売事業に乗り出すと発表した。浜岡原発の再稼働にめどが立たない中、収益基盤の確保を目指す。大手電力会社の地域独占が続く市場で、地域をまたいだ本格的な越境販売の先駆けとなり、電力各社の競争激化につながりそうだ。
 ◇新電力買収 石炭火発を新設

 中部電の増田義則専務執行役員は7日、名古屋市内で記者会見し、「関東地方で電力販売事業を開始する」と東電管内への進出を宣言した。

 中部電は10月1日付でダイヤ社の株式の80%を取得。出力10万キロワットの石炭火力発電所日本製紙富士工場の敷地内に建設し、2016年5月の稼働を目指す。9月中旬に三菱商事日本製紙、中部電の3社で火発の建設と運営を担う合弁会社を設立し、三菱商事が70%、日本製紙が20%、中部電が10%を出資する。社長は中部電から派遣する。

 新設の火発で発電した電気の全量をダイヤ社が関東圏の顧客に販売する計画だ。ダイヤ社は00年の規制緩和で小売り参入が認められた新電力(特定規模電気事業者)で、首都圏の百貨店や工場など優良顧客を持つ。規模は小さいが、首都圏での電力販売事業進出に必要な顧客基盤を生かせると判断した。

 大手電力業界はこれまで、各社が地域ごとに事実上の独占体制を築き、互いに争わず結束してきた。中部電がそんな結束を破り、今回の事業展開を決断した背景には、浜岡原発を再稼働できない苦しさと、原発事故後に東電が電気料金を値上げし、首都圏の顧客の不満が高まっていることがある。石油や液化天然ガスなどの火力燃料と比べて割安な石炭火力発電による電力なら十分に商機があると考えたためだ。中部電の増田専務は記者会見で、「電気料金の水準は(今回の決断の)大きな要素。石炭の活用で競争力のある料金設定が可能になる」と期待感を示した。

 電力市場の完全自由化が16年にも実現する中、首都圏は市場規模が大きく、東電再建の行方次第では、多くの社にビジネスチャンスが広がる。電力業界の中からも「中部電の動きをきっかけに、関東での競争は激化するだろう」との見方が強まっている。大手電力やガス会社、新電力などを巻き込み、新たな事業展開に向け、連携を模索する動きが活発化する可能性も大きい。【和田憲二、浜中慎哉】

 【キーワード】電力小売りの全面自由化

 政府が進める電力システム改革の一環で、2016年をめどに家庭が自由に電力会社を選べるようにする。大手電力による家庭向け電力供給の地域独占を崩し、競争で料金やサービスの多様化を促すのが目的。改革は3段階で進める予定で、15年をめどに全国の電力需給を調整する「広域系統運用機関」を設立。次いで電力小売りを全面自由化し、20年までに大手電力から送電部門を切り離す発送電分離を実施する。企業や工場向け電力供給は、00年に自由化されているが、大手電力が優位な状況が続き、新規参入企業(新電力)のシェアはわずか3.9%(5月末時点)。大手電力の営業区域をまたぐ電力供給もほとんど行われておらず、今後の改革での競争促進が期待されている。


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