左旋回する習近平政権 鮮明になる“親毛路線”<zakzak>

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左旋回する習近平政権 鮮明になる“親毛路線”
2013.03.09
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20130309/frn1303091009000-n1.htm
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 【緯度経度】北京 山本勲

 1月12日付本欄で筆者は習近平政権の改革姿勢は「偽装」と評したが、さらにここへきて毛沢東時代への回帰をめざすような動きが相次いでいる。「腐敗撲滅」を口実に「党中央」への異論を厳禁し、「民主」を称揚しながら言論統制を強化、「党の軍隊」を標榜(ひょうぼう)して軍隊に絶対服従を求める−などだ。党中央とは総書記兼中央軍事委主席の習氏に他ならない。いずれも毛沢東の常套(じょうとう)策で、習総書記の口ぶり、物腰も“創業者”に随分似てきた。

 「ソ連はなぜ崩壊したか? それはレーニンやスターリンらのソ連共産党の歴史をすべて否定し、ニヒリズムに陥ったからだ。さらに軍隊を党の軍隊から国家の軍隊に変え、党の武装を解いた。だからゴルバチョフ(書記長)が共産党解散を宣言した際に、誰一人立ち上がらなかったのだ!」

 中国の著名女性ジャーナリスト、高瑜氏は国内ネットのブログで習総書記が昨年12月の広東省訪問時にこう語ったと記している。習氏は1月後半に開いた党中央規律検査委員会総会でも「ソ連崩壊の教訓を総括した」(同委当局者)。

 ソ連は建国74年で崩壊したが、新中国もあと10年で74年になる。この間の中国を導く習氏にとり、ソ連の轍(てつ)をどう避けるかが最大の悩みなのだろう。

 内外メディアは習氏の広東訪問を、●(=登におおざと)小平が改革・開放の大号令をかけた20年前の同省訪問になぞらえて彼の改革派イメージを喧伝(けんでん)した。習氏も「改革・開放の停滞や後退に出口はない」と強調していた。

 だが彼の本音は体制崩壊を防ぐために中国共産党の歴史と指導者を称賛、「全党員が共産党政権の道路(路線)、理論、制度への自信を不動にする」(第18回党大会報告)ことにあった。

 最大のカギは毛沢東の位置づけにある。レーニンとスターリンの役割を一人で担った毛の存在は、中国では極めて大きい。

 ●(=登におおざと)小平体制が下した毛の評価は表向き「功績7分、誤り3分」だったが、彼の大躍進政策文革の惨害は計り知れず、その評価をめぐり国内には大きな断絶がある。これでは「政権の道路や理論」の分裂を到底防げず、ソ連の“二の舞”を防げない。

 そこで習総書記は「改革・開放の30年とそれ以前(毛沢東時代)の間に根本的対立はない」(1月5日の演説)と、毛を信奉する左派に傾斜した“新解釈”を披露。民主と自由を求める内外の改革論者を驚かせた。

 以来、習氏の“親毛路線”は鮮明になる一方だ。各地の軍区訪問では毛沢東が発した檄(げき)を連呼して、軍部の掌握を急いでいる。

 腐敗撲滅を唱えて開いた規律検査委会議では、王岐山書記に「党中央の決定に背く発言を決して許さない」と言わせて毛沢東流のこわもてぶりを示した。一方、民主諸党派などとの会合では、毛の詩や警句を常用しながら民主の拡大と腐敗撲滅への決意を表明している。

 「文章の大家 毛沢東」−2月28日付の党機関紙「人民日報」は1ページをすべて割いて毛沢東の文章を絶賛した。「文章の激しい気勢や、鋭い風刺とユーモア、唐詩宋詞の典雅さと農民口語が混然とした魅力」等々だ。

 今年12月26日は毛沢東生誕120周年になる。習総書記は大方が認める毛の文章力あたりから毛沢東復権を進め、合わせて自身が継承した共産党政権の正統性をアピールしようとしているのかもしれない。

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