スクープレポート 北朝鮮金体制を転覆せよ アメリカはCIAを送り込んだ<現代ビジネス>

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経済の死角
2013年03月04日(月) 週刊現代
スクープレポート
北朝鮮体制を転覆せよ アメリカはCIAを送り込んだ
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▼全文転載

(1)
オバマ大統領と安倍首相が、首脳会談で多くの時間を割いて話し合った北朝鮮問題。だがオバマ大統領が安倍首相に話していないことがあった。それは、CIAが極秘で進めている金正恩の除去—。

長官はすでに覚悟を決めた

 2月22日、米ホワイトハウス。2期目のオバマ政権が発足して初の海外からの賓客として迎えられた安倍晋三首相は、ランチを挟んで、オバマ大統領との日米首脳会談に臨んだ。

 2月12日に3度目の核実験を強行した北朝鮮に対する対応が、この日の日米首脳会談の主要議題だった。安倍首相は、オバマ大統領が提起した新たな国連安保理による対北朝鮮制裁案に、しっかりと肯いた。そこには、北朝鮮籍船に対する臨検や、北朝鮮系企業との銀行取引の停止といった本格的な制裁内容が羅列されていた。

「日本としては、あくまでもアメリカと足並みを揃えながら、北朝鮮に対して強いメッセージを送っていきたいと考えております」

 安倍首相はそう言って、オバマ大統領に恭順の意を示したのだった。

 だがこの日、オバマ大統領が北朝鮮への対応に関して、安倍首相に相談していない重要事項が、一つあった。

 ワシントン政治を30年以上にわたって研究している国際ジャーナリストの堀田佳男氏が語る。

「それはCIA(米中央情報局)による金正恩第一書記の暗殺です。北朝鮮は昨年末の長距離弾道ミサイル実験と、この2月の核実験によって、すでにアメリカまで到達する核弾頭を保持している可能性がある。ということは、アメリカにとって喫緊のリスクとなったわけです。そのような独裁国家の指導者は、当然ながらCIAの暗殺の対象になります」

 堀田氏によれば、CIAが金正恩暗殺を狙うのは、CIA内部の事情とも関係しているという。

「昨年11月にペトレアス前長官がセックス・スキャンダルで失脚し、CIAに激震が走りました。この1月、オバマ大統領は後任に、〝暗殺王〟の異名を取るジョン・ブレナン前大統領補佐官を送り込んだのです。'11年にパキスタンビンラディンを暗殺した時も、ブレナン補佐官が暗殺部隊の実質の統括者でした。

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ブレナン新長官のCIA内部での口癖は、『まず殺してから考えろ』。目的を達するためには手段を選ばない冷徹な諜報のプロです。そんなブレナン氏をCIA長官に指名したこと自体、オバマ大統領が金正恩暗殺を容認しているようなものです」
 堀田氏によれば、CIAは「北朝鮮はすでに約20発の核兵器を保有していて、核弾頭化の技術も急速に進んでいる」という報告を、オバマ大統領に上げているという。

 実際、オバマ大統領は、2月12日に行った一般教書演説で、「北朝鮮に対しては断固たる措置を取る」と明言している。加えて、パキスタン北西部のアルカイダ幹部を追っていたCIAの準軍事部門を、アフガニスタンの前線基地から撤退させ、「北朝鮮シフト」に移動させたとの情報も入ってきている。

オバマ大統領は、安倍首相との首脳会談で話し合った対北朝鮮経済制裁とは別に、「金正恩暗殺」というオプションを、真剣に検討し始めているのである。

 実は、CIAには北朝鮮のトップを狙った「前科」がある。'04年4月22日、中朝国境まで約15㎞という北朝鮮北部の竜川駅で列車が突如、大爆発を起こした事件である。

 当時、北朝鮮当局は「列車に積んであった硝酸アンモニウム肥料に電線が接触して起きた事故」と発表した。

 だが事故の翌月、平壌で本誌記者の取材に応じた北朝鮮幹部は、まったく異なった回答を行っている。それは次のようなものだった。

「4月19日から21日まで、将軍様(金正日総書記)が訪中し、胡錦濤主席らと首脳会談を行った。その中で、中国政府首脳から、次のように告げられたのだ。

『今回の訪中時に、あなた(金正日総書記)の暗殺が仕組まれていることが判明しました。これは中国の政府機関が確実な筋から得た情報です。そこで中国国内の警備を最大限強化し、鴨緑江(中朝国境の大河)までは、中国政府が責任を持ってお送りします』

仰天した将軍様は、中国政府と協議して、密かに帰国時間を8時間早めた。もし当初の予定通り帰国していれば、将軍様を乗せた御用列車は、竜川駅で木っ端微塵になっていた。

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その後、現場を徹底調査し、中国の協力も仰いだ結果、携帯電話を使った強力な爆弾が持ち込まれたことが判明した。そして、これは米CIAの仕業であるという結論に至ったのだ」

 確かに当時、一般教書演説で、北朝鮮イラク、イランと並んで「悪の枢軸」と名指しした米ブッシュ大統領は、金正日総書記が指示する多額の米ドルのマネー・ロンダリングに、頭を悩ませていた。当時、イラク戦争に勝利して意気揚々としていたブッシュ大統領が、CIAに「ゴーサイン」を出したとしても、まったく不思議ではない。

 それから9年を経た現在、金正日総書記はすでに死去しているが、三男の金正恩第一書記が、父親以上に過激な言動に出ている。アメリカまで届く長距離弾道ミサイル実験を成功させ、2月の核実験によって、核の小型化にも成功した模様だ。

 アメリカにとっては、完全に〝許容範囲〟を超えたのである。

6通りのシナリオ

 CIAの秘密工作活動を研究している軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏が解説する。

「CIA内の国家秘密工作本部に、東アジア部朝鮮課という百数十人規模の工作部門があります。ここでは、大量破壊兵器不拡散部の分析官や、東アジア各国に派遣したフィールド・オフィサーと呼ばれる現地工作官と協力し、対北朝鮮工作を行っています。
金正恩暗殺計画では、CIAの非公然破壊活動を担当する準軍事組織の特別活動部(SAD)がそこに絡むことになります。SADの要員約150人は全員、米軍の特殊部隊出身者で、海路・空路での極秘潜入から爆破・狙撃、さらに無人機の運用にも習熟した最強部隊です」

 黒井氏によれば、現在CIAは、次の6通りの「金正恩暗殺計画」を検討しているだろうという。

巡航ミサイルによる爆撃

金正恩第一書記が暮らす平壌市中区域の「官邸」に向けて、日本海や黄海に展開させた巡洋艦駆逐艦、潜水艦などから巡航ミサイル「トマホーク」を発射する。その前に米軍がサイバー戦で北朝鮮軍の貧弱な防空システムを攪乱する。

②空軍機による爆撃

 韓国の烏山空軍基地、群山空軍基地から出撃した戦闘爆撃機、もしくは日本海、黄海に展開した空母から出撃した戦闘爆撃機によって爆殺する。爆撃機は、ステルス戦闘機F-22、もしくはステルス爆撃機B-2を使用する。

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③無人機による爆撃

 6000㎞の航続距離を誇る無人偵察攻撃機「MQ-9 リーパー」、同3700㎞の「MQ-1 武装プレデター」を平壌上空に送り込む。それらで金正恩第一書記の所在を偵察し、確認した後、搭載する「ヘルファイア対戦車ミサイル」で殺害を図る。

工作員の潜入

 CIAの韓国系工作員を直接、北朝鮮に潜入させ、金正恩狙撃、もしくは爆殺を図る。その際、米軍の特殊部隊から韓国系隊員を選抜し、SADに移籍させる。韓国にある平壌市内を模した韓国軍特殊部隊の訓練施設でトレーニングを積んだ後、米海軍特殊部隊輸送用の攻撃型原潜「ジミー・カーター」に乗せて北朝鮮に送り込む。

生物兵器放射性物質による毒殺

金正恩「官邸」に協力者を作り、金正恩第一書記が愛用するタバコにボツリヌス菌結核菌を仕込んだり、衣服に筋腫原因菌を仕込んだりする。または、放射性物質ポロニウム210」を飲食物に盛る。前者は、キューバカストロ議長やコンゴのルムンバ首相暗殺に使用を試み、後者はパレスチナアラファト議長暗殺に試みた。

⑥側近を買収

朝鮮人民軍や国家安全保衛部の幹部を買収する。昨年4月に粛清された金永春元人民武力部長や、昨年7月に粛清された李英鎬前総参謀長の側近らには、不満分子が多い。'79年の韓国の朴正熙大統領暗殺は、このパターンと思われる。

 こうした〝選択肢〟の中から、最も起こりうるのは、次のケースだ。

〈4月15日の「太陽節」(故・金日成主席誕生日)の記念式典が開かれた金日成広場に、金正恩第一書記が姿を見せた。

その数日前に、米海軍の原潜「ジミー・カーター」で密かに上陸したCIAの工作チーム3人は、平壌市内のアジトを出て、群衆に交じって狙撃の機会を探っている。

一方、韓国から無人偵察攻撃機「リーパー」が、超低空飛行で北朝鮮に潜入する。「リーパー」は、米ネバダ州のネリス空軍基地から、ジョイスティックで遠隔操作している。平壌の工作チームも、暗号化情報を逐一、同基地に送る。

そして「リーパー」が、金日成広場で手を振る金正恩第一書記に向かって、ヘルファイア対戦車ミサイルを発射する—〉

 実際、もうすでにCIAの工作員北朝鮮に潜入していることも考えられる。韓国の情報機関である国家情報院幹部が明かす。

金正恩は、米CIAの暗殺計画が進行していることを、明らかに察知している。空爆を恐れて昨年9月から平壌を離れていないし、昨年末からは、平壌の官邸前に装甲車を張り付かせている。全国の国家安全保衛部には『針が落ちる音にまで耳を澄ませて反動分子を探し出せ』と指令を出した」

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 この3月には、北朝鮮危機が一層強まることが予想される。11日から21日には、朝鮮戦争を想定した米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」が行われる。続いて下旬には、現在、米中が水面下で調整中の国連安保理による新たな対北朝鮮制裁決議が採択される予定だ。周辺国の個別の制裁も行われる。

中国は助けてくれない

 こうした動きに、北朝鮮側も当然ながら、反発の度合いを強めていくことだろう。

 これまでは北朝鮮のバックに中国がついていたので、アメリカも容易に手が出せなかった。ところが中国でも、北朝鮮に反発する動きが起こっている。故・金正日総書記の誕生日にあたる2月16日には、瀋陽北朝鮮領事館前で、「中国は北朝鮮に対する援助を停止せよ!」と叫ぶデモが起こった。広州市の人民公園でも、同様のデモが発生した。朝鮮戦争以来、「血を分けた誼」と言われた中朝間で、このような事態は初めてだ。

 中国の外交関係者に「米CIAの金正恩暗殺計画」についてぶつけると、驚きを見せなかった。

「アメリカは過去に何度も、金正日総書記に対する暗殺を計画してきたが、それをわれわれが察知するたびに警告してきた。ところが今後は、金正恩第一書記に対する米CIAの暗殺計画を、わが国はむしろバックアップするかもしれない。

われわれの強い中止要請にもかかわらず、北朝鮮が3度目の核実験を強行した2月12日をもって、朝鮮戦争以来、連綿と続いてきた中朝の『特別な関係』は終焉したのだ」

 この中国の外交関係者は、続いてさらに意味深な発言を行った。

北朝鮮ナンバー2の張成沢党行政部長(金正日総書記の妹婿)が、近い将来、わが国に亡命申請するかもしれない。朝鮮人民軍の強硬派たちに囲まれ、日増しに立場が危うくなっているからだ。

後見人の張成沢が亡命すれば、金正恩体制は事実上、崩壊する。そうなれば金正恩自身も、家族を引き連れてわが国に亡命申請する可能性がある。こうしたシミュレーションはすでに行っていて、『黄長菀方式』を踏襲することに決めている」

 '97年2月、金正日総書記の側近だった黄長菀書記が、北京の韓国領事館に亡命申請を行い、東アジアに衝撃が走った。この時、中国は長期滞在を拒否し、黄書記はフィリピンを経由して2ヵ月後に韓国に亡命した。中国は、今後万一、金正恩一家が亡命申請をしても、長期滞在は認めないということだ。

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朝鮮半島が重大な結末を迎える日は、もう目前に迫っているのである。

私が安倍首相特使となって金正恩を説得したい
藤本健二

 私は過去13年間にわたって金正日総書記の専属料理人を務めましたが、3月になると毎年、大変でした。それは、朝鮮戦争を想定した大規模な米韓合同軍事演習が開かれるからです。

 その時節になると、全国に夜の外出禁止令が出て、夜8時以降はすべての灯りを消さねばなりません。また、平壌市内のすべてのカーテンを黒に付け替えねばなりません。まさに戦時中の雰囲気で、町は一気に緊張します。

 今年は、2月の核実験の影響で、3月の平壌は、さらに緊迫するでしょう。NLL(北方境界線)を越えて北朝鮮が韓国を挑発することも考えられます。

 私が気になるのは、中国との関係です。毎年春になると、前年秋に収穫した食糧を食べ尽くしてしまいます。そのため、春に中国が援助してくれる食糧が生命線です。米、トウモロコシ、野菜など、何から何まで中国頼みです。

 また、春に中国が援助してくれる化学肥料がないと、種蒔きをしても作物が育ちません。そのため、秋の収穫ができなくなります。

 もう一つ深刻なのが、炭です。北朝鮮は国内のほぼすべての樹木を切り倒してしまったので、薪がありません。そのため、中国が援助してくれる石炭、豆炭、煉炭がないと、調理ができないのです。

 つまり、北朝鮮という国は、中国の援助がないと、経済が回っていかない社会なのです。

 それなのに今回は、最も大切な中国まで敵に回してしまいました。これは大変危ういことです。

 こうした北朝鮮の蛮行は、私が子供の頃から一緒に遊んできた金正恩第一書記の本心とは思えません。私は昨年7月に、11年ぶりに訪朝し、正恩第一書記と抱擁を交わしました。その時の模様は、新著『引き裂かれた約束』で記した通りです。

 正恩第一書記は本当は、私と抱擁を交わしたように、オバマ大統領や安倍首相とも抱擁を交わしたいのです。早く国際社会の仲間入りをしたいのです。

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 私が見てきた北朝鮮の人々は、決して強硬ではなく、情の深い民族でした。いまの北朝鮮の姿は、「窮鼠猫を噛む」という諺そのものです。

 アメリカとも中国とも関係がぎこちなくなった現在、正恩第一書記にとって頼みの綱は日本です。そして彼が一番信頼している日本人はと言えば、少年時代に共に過ごした私です。

 だから私が安倍首相の親書を携えて再度、訪朝し、正恩第一書記に直接、日本からのメッセージを伝えたい。そうすれば、正恩第一書記は強硬な態度を改める可能性があると思うのです。
週刊現代」2013年3月2日号より

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