【許していいのか!復興予算デタラメを暴く】“フダ付き”独法が暗躍している高台移転事業(2013年2月)日刊ゲンダイ

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【許していいのか!復興予算デタラメを暴く】“フダ付き”独法が暗躍している高台移転事業
2013年2月27日
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震災を機にゾンビのように復活
 巨大事業が優先されるあまり、人手や重機が足りなくなり、復興が進まない例はゴマンとある。宮城県石巻市では2012年度の入札不調の割合が49.5%にも達した。同じく津波被害がひどかった気仙沼市が24.2%。宮城県全体の入札不調の割合は34%。お隣の岩手県も同じような状況だ。

 岩手県陸前高田市では昨年9月、小中学校2校の災害復旧工事に入札参加予定だった8社が全部、辞退した。「複数の工事を抱えて手が回らない」と言うのである。

 岩手県大船渡市でも昨年8月、災害公営住宅として利用するべく、雇用促進住宅改修工事の入札を行おうとしたが、指名業者10社すべてが辞退した。ゼネコン幹部がこう話す。

「東北地方全体で生コン不足となって価格が高騰しています。河川事業も工事受注の正式契約が交わされているのに、工事を開始できない状態が続いています。三陸沿岸道路が本格化すると、工事遅延や入札不調はさらに頻繁に起きるでしょう」

 復興を妨害しているのは無駄な巨大道路だけではない。去年秋から始まった「防災集団移転促進(防集)事業」、いわゆる「高台移転」も問題だらけだ。宮城県石巻市雄勝地区で住民の9割が反対しており、他の地区でも「造成しても移転者が少なく、ぺんぺん草がはえるのは確実」「巨額の復興予算を投入して、人が住まなくなる限界集落をつくるようなもの」と酷評されている。

 しかも、この高台移転事業の発注者の中に、国交省傘下のUR(独立行政法人都市再生機構)が入っているのだ。NPO法人まちづくり ぐるっとおおつち」(岩手県大槌町)の澤山重夫理事(元町議)はこう話す。

「いま求められているのは単なる復旧復興ではなく、1次産業と観光を組み合わせた新たな『地域再生』です。そのためには現場を見たり、被災者の声を聞くことが不可欠。それなのに役場に出入りするようになったURの職員は、現場をきちんと見ようともせず、サービス精神にも欠けている。別にURが間に入って手数料を取らなくても、彼らが設計・施工業務を丸投げしているゼネコンに行政が直接、頼めば、高台移転は進められるはずでしょう」

 URといえば、消費者のニーズそっちのけの役人感覚でニュータウン開発を進めて莫大な負債を残し、独立行政法人改革で廃止寸前にまで追い込まれたところだ。ところが、震災復興を機に「宮城・福島震災復興支援局」を仙台市に、「岩手震災復興支援局」を盛岡市に設置、ゾンビのように復活しようとしている。

 もちろん、OBがURに天下っている国交省の差し金だろう。少なくとも、ゼネコン業者はそう見ている。

 山間部への高台移転は新規の宅地開発となるため、用地取得や造成費や周辺整備費がかかって事業費が膨らむ。陸前高田市では清水建設などの共同企業体(JV)が163億円で落札したが、被災地全体では数千億円に達するとみられている。

 巨額な高台移転はURやゼネコンなど“国交省土建ムラ”の住人たちには膨大な利権になるのである。

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