特集ワイド:12党乱立の衆院選 ひと味違う!? 投票先の見つけ方{毎日新聞}

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特集ワイド:12党乱立の衆院選 ひと味違う!? 投票先の見つけ方
毎日新聞 2012年12月06日 東京夕刊
http://mainichi.jp/feature/news/20121206dde012010023000c.html
▼全文引用

(1)
 ◇(1)主張の変化、違和感ない人に (2)政治家育てる視点を持って (3)金銭的メリットを考える

 16日投開票の衆院選には12政党が候補者を擁立、さらに各党は多項目の政策を発表していて、どこがどうかを把握するのは並大抵ではない。「誰に入れたらいいかわからない」という人は多いのでは。そんな時の投票先の見つけ方を考えてみた。【戸田栄】

 「今回は『行かなくちゃ』と『でもねえ』がセットになった、とてもやりにくい選挙です。いいかげんにしてという感じですね」と話すのは、エッセイストの残間里江子さん(62)。友人には、政治がこのままでは日本はダメになると考える人が多いという。確かに、震災復興、原発問題、超高齢化社会への対応、景気、外交など課題が山積だ。「しかし……」なのである。

 「12党もできたのは、党を変わって出馬しなくては勝てないと就活みたいな考えの人がいることも原因でしょう。その結果、所属する党と、実は考えが違う候補者がいたりする。これじゃあ誰に入れたらいいか判断できません」

 最近は、「消費税に賛成、反対」など立候補予定者に実施したアンケートと同じ質問に有権者が答え、各政党・候補者の主張と自分の考えの一致度を比べるボートマッチという方法がある。毎日新聞もインターネットの「毎日jp」で5日から実施している。

 ボートマッチは、政党や候補者の回答を「信頼すれば」投票の参考になる。残間さんは、ひと味違う選び方を提案する。名付けて、違和感のリトマス試験紙選択法だ。(1)立候補者の主張を並べる(2)情報を集めて以前と違うことを言っていないかを調べる(3)主張の変化に、これは信用できないと違和感を覚えた人には×をつける−−という方法だ。そして、残った人の中から、自分の思いに近い人を選ぶ。

 「けっこう×の人が多いかも。本当は混乱する国政の中へ火中のクリを拾いにいく人に入れたい。でも、誰が本物かを見極められないから、その反対の人からどけていくのです」。巧言令色(口先のうまさやいい顔をすること)に注意せよ、とは論語の教えである。政治の大本に立ち返っての選択法といえようか。

 「どこが政権を担っても、結局は何もできないまま終わってしまうんじゃないの?」という政治不信から、投票先を決められない人がいる。安倍晋三内閣以来、菅直人内閣まで5内閣が連続で政権運営に行き詰まり、いずれも1年前後で退陣している。


(2)
 「政治家は期待させるようなことを言うわけですが、政治に対する過大な期待が裏返って絶望になる。これからは限界の中での可能性を求める政治を考えていくべきだ」と、杉田敦・法政大法学部教授(政治理論)は指摘する。

 国民は生活につながる経済を重視しがちで、経済に対する政治の力の低下が政治への失望につながっていると杉田教授はみる。かつては政府の経済政策が経済を左右したが、経済がグローバル化した今、一国の政策の影響力は極めて小さくなったという。

 「経済のみならず、環境問題など国境を超えるテーマがどんどん増え、一国の政治の限界が明らかになっている。なのに、選挙では『わが党なら』とうそをつく。一方で、一国の限界を踏まえてできることはあり、それを争点にすべきです。子育てや高齢者の支援で富の再配分を図るか否かは、そういうテーマの一つ。有権者は劇的な変革への幻想に惑わされず、可能な範囲で徐々に国を変えていく意識を持つことが重要です」

 杉田教授はさらに今回の衆院選に、「政治家を育てる文化をつくる」という視点を加えるべきだと提言する。

 「欧米では、有権者が選挙を手伝ったり、資金を出したりして政治家を育てます。いったん支持すると、当分は支持し続けようという考えもある。日本ではその土壌がないところへ、1人しか勝てない小選挙区制を持ち込み、政治家が生き残りを最優先するようになりました」。偉い人に政治を託すのはある意味、楽ちんだろう。しかし、民主主義の成熟のために自分たちの代表を育てる姿勢を重視し、候補者の将来性を見込んだ1票を投じてみるのもいい。

 「投票先だけでなく、投票に行くか行かないかも損得勘定で決めればいい」という「合理的選択論」なるものがある。東北大経済学部の小田中(おだなか)直樹教授(社会思想史)は「政治的主張を受けての投票は感情に流されやすく、かえって政治を見誤ることがある。政治はカネに換え難いとばかり言わず、個人的損得で投票の意味を考えてみることも有用です」と語る。

 考え方を紹介しよう。まずA候補が当選した場合の自分の金銭的メリットを計算する。だが、自分が投票に行かなくてもA候補が当選する場合があるので、自分が行ったからこそ当選する確率(キャスチングボートを握る確率)を掛ける。それが投票に行くメリットの計算値だ。そして投票に行かなかった場合のメリットと比較し、行くか行かないかを考えればよいという。

(3)
 モデルケースを例示する。1人暮らしの女性会社員、B子さん(45)の年間支出を200万円としよう。消費税率5%アップの是非が2候補による地元の衆院選小選挙区の争点で、増税派が勝てば年間でB子さんの払う税金は10万円増える。女性の平均寿命の85歳まで生きるなら、40年間で400万円の負担となる。増税派は高齢者福祉にあてるというが、B子さんは信じていないので自分にフィードバックする分はゼロと考える。

 キャスチングボートを握る確率は複雑な計算をしないと出ないが、人口40万人のこの選挙区では最大値が約800分の1となる。これを400万円に掛ける。B子さんが選挙に行き、反増税派に投票するメリットは大接戦の場合だと5000円分となる。実は投票日はアルバイトがあり、行けば3000円がもらえる。ここで両方を比較する。投票に行く方がメリットが2000円分大きいため、行った方が得という結論になる。

 利権政治を認めるものでは当然ない。小田中教授は「正確な損得の計算は難しいが、そういう考え方を身につけるのが大切。漠然とでいいから考えてみてください。案外、自分の損得が選挙と関係があるとわかり、投票に行かなくてはと思うのでは」と話す。

 政党や立候補者の政治的主張に共感できる時はいい。だが、そうではない時に棄権するのもためらわれる。少しはご参考になっただろうか。

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