衆院選:1カ月前に役割「取引」 橋下氏と石原氏、都内で極秘会談{毎日新聞}

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衆院選:1カ月前に役割「取引」 橋下氏と石原氏、都内で極秘会談
2012年11月20日
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 ◇橋下氏「市長放り出せず」 石原氏「次は君に任せる」

 「今は市長を辞めることはできないだろうけど、次は君にやってもらうんだ」。16日午前、東京・虎ノ門ホテルオークラ東京の会議室。太陽の党の石原慎太郎共同代表(当時)は、日本維新の会代表(同)の橋下徹大阪市長に語りかけた。

 橋下氏が国政に出馬せず、石原氏が代表に就く−−。土壇場で決着したかのように見える役割分担は実は約1カ月前の極秘会談で決まっていた。

 10月21日の昼過ぎ、遊説先の福岡市から空路上京した橋下氏は、東京・紀尾井町ホテルニューオータニで、石原氏とひそかに会談した。「本当に次期衆院選には出ないのか」と確認する石原氏に、橋下氏が「市長を放り出せない」と不出馬を明言すると、石原氏は、おもむろに「トンネルを掘る掘削機の先端部分が俺なんだ。1期だけでもやる」と切り出した。橋下氏は異議をとなえず、石原氏は4日後、都知事辞職と新党結成を表明した。

 橋下氏は2人だけの会談で自身の不出馬を石原氏に確信させ、同氏の取り込みに成功した。橋下氏は苦境にあった。維新は9月の国政政党化後、支持率が低下。特に地盤の近畿以外で、橋下氏の「一枚看板」に限界が見え始めていた。反転攻勢のために出馬を期待する声が維新内に広がっていたものの、「市長を投げ出した」と足元の大阪で支持が揺らぐリスクがある。

 手詰まり感が出始めたこのころ、橋下氏のブレーンの一人は橋下氏に「今回は野党でいい。次の参院選衆院選で与党になればいい」と伝えていた。

 石原氏の合流で、石原氏が「ワンポイント先発」として出馬、維新が一定の勢力を確保したうえで、橋下氏がそれを足場に「次」を狙う新たな戦略が固まった。橋下氏は今月18日、大阪市内で記者団に「維新単独のままでは議員を数人当選させて終わり。次の選挙でどうなるかわからない」と語り、石原氏との合流が「次」を見据えたものだったことを明かした。維新松井一郎幹事長は国会議員の一人に「衆院選後も維新の勢いが続けば、橋下氏は来年の参院選に出馬する可能性がある」と漏らした。

 一方、80歳を迎えた石原氏にも焦りがあった。たとえ橋下氏に利用されても、今回の衆院選が最後の機会という思いがある。維新の代表として衆院選に臨む華々しさは「1期だけ」であっても十分だ。石原氏と親しい元自民党参院議員は「石原さんは作家。自分が目立つことしか考えていない」と話す。

 「石原はかわいそうだよ。あれだけの男がねえ、市長風情に持ち上げられ、まな板の上にのせられちゃって」。一時は石原氏と新党結成を目指した亀井静香・前国民新党代表は、そう皮肉った。
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