衆院選大敗を機に民主党はどう変わるべきか!? 〜自民党ベテラン秘書が語る「族議員=利権政治家必要論」{現代ビジネス}
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伊藤博敏「ニュースの深層」
2012年12月06日(木) 伊藤 博敏
衆院選大敗を機に民主党はどう変わるべきか!? 〜自民党ベテラン秘書が語る「族議員=利権政治家必要論」
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▼「現代ビジネス」から全文引用
(1)
衆議院選が告示された4日、幾つかの選挙事務所を回ってみた。
想像通り、「必死の民主党に余裕の自民党」という構図である。ある自民党候補に、「楽勝ですね」と尋ねると、「それは禁句です」と答えるが、目は笑っている。
前回、圧勝した民主党は、今回、劣勢を免れず、その理由もわかっている。
マニュフェストはいずれも中途半端に終わり、ばら撒き政策の限界と政治的力量のなさを見せつけた。ただ、民主党政権の欠点を、今更、申し立てても仕方がない。むしろ100議席以下に減らすかもしれないという大敗北を機に、どう変わるべきかを論じた方がいい。
利権政治家を育てなければダメ
興味深かったのは、自民党で多くの政治家に仕え、大臣秘書官を何度も経験、政策秘書として若手政治家を"育てた"ことでも知られるベテラン秘書が、自民党時代の「功」の部分を強調、「民主党も族議員を生んで、利権政治家を育てなければダメだ」と、逆説的に民主党の欠点を突いたことだった。
利権は、常に否定的に報じられる。「利権政治家」という言葉がいい意味で使われたことはない。だが、「政治のプロ」を目指せば族議員になるし、族議員になれば利権がくっついてきて、それが政治資金につながり、政治家としての活動範囲を広げ、仲間を増やし「大物政治家」となっていく、という現実がある。
(2)
民主党の「反自民」「反官僚主義」が色褪せた今、あえてベテラン秘書の「族議員=利権政治家必要論」に耳を傾けてみよう。
「長期政権の間に、自民党は政治家を育成するシステムを築き上げました。衆参の委員会に対応する形で部会を置き、そこで当選一回生、二回生の間は議論を聞き、勉強を重ねて行政と政策に精通、やがて部会の役職をもらい、副部会長、部会長に就き、族議員として党も役所も業界も認知する存在となります。そうなれば一人前で、ひとつの分野を極めれば、他の業界にも応用が利くようになり、政治家としての実力がアップします」
役所に対応した経済産業部会、国土交通部会などの部会のなかで、官僚と業界とのパイプができれば、陳情を処理することができるようになる。陳情は、許認可か予算か、どちらかを伴う。そこに利権が生じる。だから自民党的な政治が否定され、企業献金を禁止する政党は少なくない。
利権と族議員の効用
だが、族議員となれば伴う利権を、あえて否定せず、「利権政治家を育てよ」という。どういう意味か。
「口利きをして裏ガネをもらうのが『利権政治家』のイメージですが、そんな脱法行為を勧めているわけではありません。人は利権があるから一生懸命になるという本性を認めようということなんです。
道路を作り、橋を架け、トンネルを掘るといったインフラ整備も、太陽光発電のなど新エネルギー政策も、通信の規制緩和も、政策と行政にはすべて利権が絡みます。
予算と仕事が欲しい人は、積極的に力を持つ政治家にアプローチ。それが票やパーティー券につながるという意味では利権ですが、許される範囲で政治を利権化するのは悪いことではありません」
自民党支配が長く続く間に、システム化し惰性となり、利権がズブズブの癒着のなかに沈んでしまい、忌むべきものとなってしまったが、人を動かすインセンティブとしての利権と族議員の効用を見直そうという意見は、政権から外れ、辛酸をなめた自民党から出た"本音"といっていい。
それは政治がうまく機能した昭和の高度経済成長期への郷愁を伴うものだけに、「退歩」という意見もあるだろうが、民主党政治主導の欠落を幾つも見せられた後だけに、再度、評価する価値はあるのではないか。
(3)
政治のプロとはなにか
欠落の最たるものが、民主党が政治主導で始めた農林水産物等中国輸出促進協議会である。私は、本コラムで3週間前に「民主党政権の"あだ花"に終った」と、この社団法人のことを書いたので繰り返さないが、事業が中断したのは、中国側の対応がバラバラだったという意思疎通の悪さに加え、農水官僚が途中から離反、協力しなくなったからだ。
それを社団法人側は「農水省のせいだ」と批判するのだが、官僚組織が動かないのは「国益に反する」と判断したためで、結果的に、行政との信頼関係を築いていない社団法人側が「政治主導」で利権に突っ走ったという悪い印象しか残らなかった。
要は、「政治のプロとはなにか」という根源的な問いかけである。
どんな職業でもプロは熟練を必要とする。それは、企業人であれ、マスコミ人であれ、医師のような技術者であれ同じだろう。5年、10年と技を磨き、知識を習得して一人前になる。政治家も同じだ。
小泉チルドレン、小沢ガールズとして当選、当然、使い物にはならない。政党助成金を受け取る政党には、新人を一人前にする議員育成のシステムが必要だ。それがかつての自民党にはあり、今の民主党にはない。二極化の宿命で、風が吹いて、シーソーのように新人を輩出、次の選挙で淘汰されるが、これほど無駄な話はない。
ベテラン秘書が続ける。
「国民も我慢が足りません。わずか3年で民主党という政党にダメ出しするのは早過ぎます。プロが育ち、政権を担える党になるには後、5年は必要でしょう。政党には育てるシステム、国民には見守る我慢が必要です」
これは、大勝ゆえの余裕ではなく、前回、苦杯をなめ、民主党のポピュリズムのなかで政治が不安定化、未熟な政治家が多くなったと感じるがゆえの憂慮である。
縦割りの弊害はあっても、役所単位に行政のプロがいて、そこと連携しなければうまく回転しないのは、どの国の政府も同じ。そこに政治的アプローチという面での族議員がいて、役所と業界の意見を吸い上げる。
民主党政権の「失われた3年」を、政治家不在という観点から見直し、再生を図った方がいい。プロ政治家の不在による停滞ほどの害悪は他にないからだ。
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