【社説】2012年12月3日 温暖化対策会議 脱原発と両立できる{中日新聞 CHUNICHI WEB}

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【社説】2012年12月3日
温暖化対策会議 脱原発と両立できる
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◇全文引用

 脱原発は省エネとともに進む。ドーハの気候変動枠組み条約第十八回締約国会議(COP18)は、ポスト京都議定書への橋渡しをする重要な会議だ。フクシマを経た日本こそ、存在感を示すべきだ。
 重要な節目の会議である。
 温室効果ガスを削減するための唯一の国際ルール、先進国にまず削減義務を課した京都議定書は、この年末で約束の期限が切れる。ところが、それに続くルールは、途上国と先進国の利害がかみ合わず、いまだに決まっていない。だが、少しずつ前へは進んでいる。
 一昨年のメキシコ・カンクン会議(COP16)では、気温上昇を国際社会全体で、産業革命前と比べて二度以内に抑えるという南北共通の長期目標を確認できた。
 昨年の南アフリカ・ダーバン会議(COP17)では、京都議定書の延長を決めた。ただし、単純延長ではなく、参加各国が自主的な削減目標を提出 し、それを達成する義務を負う。南北すべての国が削減に参加する新たなルールは、二〇一五年までに採択し、二〇年の発効を目指すことにした。
 どの国もルールの空白期間は望んでいない。ドーハ会議は、先進国の削減目標に合意して、第二約束期間の船出を図る場所である。
 ところが日本は、中国などの参加なしには温暖化防止の実効性がないとして、第二約束期間の削減義務受け入れを拒否している。
 昨年世界の二酸化炭素(CO2)排出量は、過去最高を記録したという。京都議定書を離脱した米国でも、十月末に東部で猛威を振るったハリケーンな どの異常気象を体験し、気候変動への危機感を強めている。近い将来、南北を問わず高い削減義務を受け入れなければならない時が来る。
 原発停止による化石燃料消費の増加が、高い削減義務を掲げられない理由にされている。しかし、原発停止は、企業や家庭に省エネを定着させた。省エネすなわち、温暖化対策ではないか。
 オフィスビルや事業所に独自のCO2削減義務を課す東京都では、3・11以降、削減率が大幅にアップした。中には全体で四割減らしたビルもある。
 九〇年比25%減という国際公約の看板を、やすやすと下ろすべきではない。脱原発と温暖化対策を両立させ、低炭素社会へ向かう自治体レベルの取り組みをアピールしつつ、政府には、ポスト京都の交渉をリードするきっかけを、ドーハでつかんでもらいたい。
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