衆院選:未来公約発表 代替策欠く卒原発 「再稼働」巡り記述混乱(毎日新聞)

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衆院選:未来公約発表 代替策欠く卒原発 「再稼働」巡り記述混乱
毎日新聞 2012年12月03日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/news/20121203ddm002010144000c.html
◇全文引用

(1)
 日本未来の党嘉田由紀子代表)が2日公表した衆院選公約の「卒原発カリキュラム」は、関西電力大飯原発福井県おおい町)の即時停止など、急進的な「原発ゼロ」を打ち出した。だが、代替エネルギー普及の具体策などは明確でない。【笈田直樹】
 公表されたカリキュラムはA4判、4ページ。より具体的な計画の公表時期は「未定」(飯田哲也代表代 行)だ。原発ゼロに必要な代替エネルギーは「発送電分離を含む電力システム改革を断行」とのみ記述され、取りまとめに当たった飯田氏は「代替(エネル ギー)は順次拡充していく」と語るにとどまった。
 当初の3年間で、使用済み核燃料の中間貯蔵場所を選定するとの政策も盛り込まれたが、自治体からは猛反発が予想される。飯田氏も「最大の一番しんどい議論だ」と発言。中間貯蔵が決まらなければ、計画はたちまち壁に突き当たる。
 公約策定はドタバタを繰り返した。会見で配布された文書には「世界最高水準の原子力規制体制の確立」と記述されていたが、「明け方に文言を入れ替えた」(飯田氏)として「放射性物質・廃棄物規制」に修正された。
 混乱には伏線がある。嘉田氏は1日、読売テレビの番組で一定の条件で「再稼働を認める」と発言し、その 後に撤回した。再稼働しないなら原子力規制は不要のはずだ。文書にはほかにも「炉の寿命は最長40年」など再稼働を前提とした記述が残る。嘉田氏の発言の ぶれが混乱につながっている。
 嘉田氏は滋賀県知事として原発政策を積極的に提言し、4月には原発事故で被害を受ける可能性がある「被 害地元」との考え方を提唱。大飯原発の再稼働では放射性物質の拡散予測を県独自に実施した。最終的に事実上容認に転じたが、10月には「計画停電の責任は 一知事では持ちきれない。あの判断しかなかった」と発言。この経験が新党設立のきっかけになった。
 しかし、国政に候補者を出すことで政策の実現可能性は厳しく問われる。野田佳彦首相は2日、千葉県四街 道市の街頭演説で「すぐにゼロにして本当に経済が持つのか。現実的に進めていく民主党を選ぶのか、無責任なエネルギー政策に陥っている他党を選ぶのか」と 強調した。日本維新の会橋下徹代表代行も2日、原発立地県の福井県敦賀市で街頭演説し「嘉田さんのプランは立地(地域)に何も触れていない」と批判し た。
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 ◇原発を巡る嘉田氏の発言
11年

(2)
 3月28日 数十年にわたる琵琶湖の水質改善も、原発事故があればあっという間だ(関西電力原発安全対策の説明に、滋賀県庁で)
 6月21日 脱原発と言うとそれだけでイデオロギーになる。原発からの卒業、今どの段階にいるかによって何年かかって卒業するかということで「卒原発」は大事な表現かなと思う(定例記者会見)
12年
 4月 2日 (原発がある立地地元に対し)被害を受けるかもしれない「被害地元」を新たな概念として提示したい(定例記者会見)
   13日 被害地元の切り捨てだ。政権にブレーキの仕組みがない(閣僚会合の再稼働妥当判断に、滋賀県庁で)
 6月21日 警鐘に耳を傾けなかったことが福島原発事故の一つの反省だったはず。オオカミ少年と言われても、警鐘を鳴らし続けるしかない(毎日新聞のインタビューで)
 9月18日 折れるべきところは折れる。それが現実的な判断(定例記者会見で原発立地県並みの原子力安全協定の事実上断念を表明)
11月20日 原発ゼロを強調していた橋下徹大阪市長がかなり後退した。仲間を失った感じ(定例記者会見で日本維新の会と旧太陽の党の合流に)
   27日 福島の原発事故を確実に終わらせて、確実に原発から卒業できる道を示さなければならない(新党結成会見で)
12月 1日 原子力規制委員会が安全性を担保し、政府が必要だという判断をした場合、再稼働を認める(読売テレビの番組で。のち撤回)

毎日新聞 2012年12月03日