草津でもいじめ 教育現場対応に限界【滋賀】

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草津でもいじめ 教育現場対応に限界【滋賀】
2012年7月14日
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中日新聞 から全文引用)



 昨年十月に飛び降り自殺した大津市皇子山(おうじやま)中二年の男子生徒=当時(13)=のいじめ事件で、県警が強制捜査に乗り出す中、新たな少年事件が発覚した。十三日に草津市立中学一年の男子生徒(12)を殴るなどした傷害などの疑いで県立高一年の男子生徒三人が逮捕された。被害を受けた生徒が命を落とすことはなかったが、いじめ根絶のために教育現場に何が求められているのか。

 「このような事件が発生したことは大変残念」。草津市役所で開いた会見で市教育委員会の三木逸郎教育長は淡々と語った。

 市内の全十九小中学校は各学期に全生徒を対象に学校生活に関するアンケートをしている。担当者は「男子生徒のいじめをうかがわせるような結果はなかった」と説明する。五月上旬に母親から被害届が出された後で校長や担任らが家庭訪問しても、今回の事件以外は把握していなかったという。

男子生徒が、顔や背中を殴られたとされる現場=草津市内で
写真

 県警は、逮捕された高校生三人らのいじめグループが四月中旬から数回暴力行為をしていたとみている。市教委は「これまでは一つの傷害事件として捉えていた」と述べ、「生徒らに聞き取りし、学校として調査を進める」と話した。

 県警がいじめの解決に向けて動く事件は昨年十一月にも発生している。高島市内の中学校で男子生徒を全裸にさせて写真撮影するなどして、暴力行為法違反などの疑いで少年三人が逮捕された事件。

 被害届を出す前に男子生徒の両親が学校に相談したが、「真剣に取り扱ってくれない。納得する答えを得られなかった」として高島署に相談。署は県警少年課とともに捜査をし、早期逮捕につなげた。当時の担当者は「被害者が生きていることもあり、裏付け捜査もしやすい面もあった。早い被害届の提出が功を奏した」と振り返る。

 県警と学校現場の連携は、児童生徒のいじめの増加とともに、二〇〇二年から県警で少年犯罪や補導事件があった場合、県警から学校に連絡するよう申し合わせた。〇九年からは、県警と学校は「双方向に連絡し合うこと」に変わった。

 県教委によると、二〇〇六年度に四百六十四件だった小学・中学・高校・特別支援学校のいじめ認知件数は、一〇年度には二百十五件に減った。減少の背景には、いじめ対策の取り組みが進んでいる一方で、いじめが潜在化するなど、学校側から見えにくくなっているとの懸念もある。

 県教委のある職員は「以前は学校に警察が踏み込むのはいかがなものかという風潮があったが、今は学校だけで抱えきれない問題が増えている」と漏らす。高島市のいじめ事件を挙げ「あのままエスカレートしていったらどうなるか分からなかった」とも振り返った。今回の草津市の事件には「個人的には刑法的にみても、逮捕されるような行為だと思う」と話した。

 県警少年課は「学校などで犯罪にかかわる問題行動があれば積極的に警察を頼ってほしい」と説明している。